【インタビュー&特集記事】
岡部 智(株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター IR・観光プロジェクト 部長)
渡邉 雅之(弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士)
「カジノ」という言葉のイメージは、昨今の賭博依存症に関する調査結果や野球賭博、バドミントン選手の裏カジノ出入りなどによって悪化しています。
日本経済新聞神奈川版5月10日付けの記事によれば、横浜国立大学の川添裕教授や学生らが横浜市内で構想が浮上している統合型リゾート(IR)のイメージを複数者に聞いたところ、「カジノは横浜のイメージに合うか?」という質問に対しては、「いいえ」の回答が67%、「横浜にカジノができたら行ってみたいか?」という質問に対しては、「いいえ」の回答が69%であったとのことです。
(なお、調査実施日は2015年7月26日。山下公園において、面接方式で実施。回答数は463名)
カジノIRジャパン(注):
横浜国立大学の調査には、1)「IR」のイメージを調査する目的ながら、「カジノ」について質問、2)実施が2015年7月と約一年前、など留意点がある。政府が2014年6月にIR検討を正式に開始してから、二年間が経過。政府、自治体、経済界が、IRの調査検討を積み上げてきた。今後、IR推進法の成立を契機に、それら知見を社会にPRし、理解を高めていくことになろう。
わが国では、刑法において、賭博開帳罪・(常習)賭博罪が定められています。
しかしながら、日本では、裏カジノ出入りなど昔から日本のスポーツ界に限らず違法賭博に手を染める人が多いです。また、近時、逮捕者が出てきましたが、海外サーバーによるオンライン賭博についても、賭博罪に該当する可能性があるにもかかわらず興じている者も多いです。
他方、競馬や競艇などの公営賭博については、法律により地方公共団体等の公的主体が施行者となることにより、また、パチンコやパチスロについては射幸性を抑えることによって風営法上の「遊技」として扱うことにより、賭博罪の違法性が阻却されることとされて営まれています。
しかしながら、公営賭博やパチンコ・パチスロにおいては、賭博の本質的な問題である、賭博依存症の問題、反社会的勢力の関与といった問題、ギャンブルに関する教育などに正面から取り組まれているとは言える状況ではありません。
議員立法として国会に提出されている「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(以下「IR推進法案」といいます。)は、これらの問題に正面から取り組んで管理することにより、カジノを合法化しようとすることを目的とする法案です。
これにより、日本で問題となっている違法賭博等の問題を抑制に向けての第一歩が可能になると考えられます。
しかしながら、マスメディアで目にする「カジノ」という単語が醸し出す印象は、「賭博」、「危険」、「ギャンブル」、「マフィア・暴力団」、「マネロン(マネー・ローンダリング)」、「依存症」という負のイメージと結びつけられ、一般国民に受け入られにくくなっています。

IR推進法案の「IR」とは「Integrated Resort」の略語です。これは、シンガポールにおいて、カジノを含む統合型リゾートを導入された際に作られた造語です。
わが国においても、業界関係者においては「IR」と言えば「カジノを含む統合型リゾート」の意味で通じますが、多くの国民にはインベスター・リレーション(Investor Relation)と混同されており、ここ数年間使用されてきましたが、一段の理解促進が必要な状況です。
カジノIRジャパン(注):
以下の電通の調査の実施タイミングは、2015年9月。政府が2014年6月にIR検討を正式に開始してから、二年間が経過。政府、自治体、経済界が、IRの調査検討を積み上げてきた。今後、IR推進法の成立を契機に、それら知見を社会にPRし、理解を高めていくことになろう。

他方、米国人にとっては、「Integrated Resort」はやや不自然な、あるいは誤解を生む言葉として受けとめている人が多いです。1960年代までの米国においては、黒人への差別が激しく、ラスベガスのカジノにも黒人は出入り禁止でありました。歌手のサミー・デービス・ジュニアもステージに登場することが許されませんでした。公民権の確立によって、学校は白人と黒人が「統合」されることになり、「integrated」の言葉が頻繁に使われた背景があります。
「IR」(カジノを含む統合型リゾート)の候補地を都市だけでなく、地方にまで広げるのであれば、「日本版のIR」を具現化した概念が必要となります。規模でいうならばラスベガスやシンガポールのような巨大施設だけでなく、日本らしいコンパクトなIRも含まれる概念が必要となります。
また、IR施設の特徴としてショッピングやグルメなどを楽しむ女性が消費の主役となる可能性が秘められます。ゆえに、カジノ合法化においては、女性の理解が必要となります。「カジノ」と聞いただけで「なぜ多くの女性は頑なに拒否する傾向があるのか」ということをよく検証する必要があります。
そもそも、人間社会とギャンブルは、切っても切り離せないものです。世界中で営まれているカジノが日本で運営できない理由はありません。
カジノにおいてギャンブルを行うか否かは、原則として個人の自由選択であるべきです(もちろん、依存症患者、生活破たん者などについては入場規制をかけることなどが必要となります。)。
他方、国家がギャンブルについて一定の規制をかけることは必要がありますが、また限界もあります。このようなギャンブルの本質について、正しい知識を国民に伝達することが非常に重要となります。
わが国では、Casinoについて「カジノ」という用語を用いるのが通例ですが、これは、フランス語の発音「キャズィノ」に近いものです。
しかしながら、世界で最もポピュラーな英語での発音は「kəsíːnou」であり、「カッシーノ」と発音するのが実は一番正しく、原音に近いものです。
「カッシーノ」は新しい造語ではありません。作家の浅田次郎氏が、海外のカジノを題材にした「カッシーノ!」という題名の書籍を出しています。
多くの日本人にとって「カッシーノ」という用語の語感には、「優しさ」、「リゾート」、「軽快、マイルド」、「イタリアン、地中海」、「ファッショナブル」、「オシャレ」という明るいイメージをもたらすのではないでしょうか?
そこで、合法化を大きな転機として、我々は「カッシーノ」という用語を用いることを提唱いたします。「カジノ」という言葉が醸し出す、これまでの暗い負のイメージから脱皮するだけでも新鮮であると考えられます。
と同時に、国が目指す全く新しい事業であることを国民によりわかりやすく、かつ親しみやすい言葉として育てていきたいと考えます。
カジノ × / カッシーノ 〇

さらに踏み込んで、下記8で説明するとおり、「カッシーノ」を「合法」で、「管理」されたものというイメージを持たせることも考えられます。
「カッシーノ」は、上記7のようにクリーンなイメージを持つ用語だけの意味を持つものではありません。
IR推進法案の下で認められる統合型リゾート(IR)において、規制当局から免許を取得した「合法的」で「管理・監督」の対象となり、従業員や国民全体に対してカジノの有するリスク等について「教育・情報提供」がなされているCasinoのみを指す用語として用いることが考えられます。
すなわち、「カジノ」が裏カジノのような非合法的なものも含む用語であるとすれば、「カッシーノ」は、IR推進法やIR実施法の下で認められる合法的なもののみを指す用語として捉えるべきです。
この点、IR推進法案においては、「カジノ施設」(第2条第1項、第10条)、「カジノ施設関係者」(第9条、第10条)、「カジノ管理委員会」(第2条、第11条)という用語が用いられていますが、我々が政府の法令データ提供システムで法令検索をしたところ、「カジノ」という用語を用いた法令は現在のところないようです。
そこで、「カッシーノ施設」、「カッシーノ施設関係者」、「カッシーノ管理委員会」という用語を用いることも考えられます。
2020年に開催される東京オリンピック後(アフター・オリンピック)の経済的な起爆剤のためには、IR推進法案の早期成立はどうしても必要不可欠なものです。
その実現のためには、同法案の理念であるClean Casinoを体現する「カッシーノ」という言葉を定着させることを提言いたします。
以上
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