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IRゲーミング法制度 第34回「IR推進法案・IR実施法案に対する要望」

2016-08-19

【IR資料室】

第34回 IR推進法案・IR実施法案に対する要望

弁護士 渡邉 雅之 (略歴は巻末を参照)

自由民主党の議員が衆議院・参議院ともに3分の2を超え、本年の秋の臨時国会における「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(「IR推進法案」)の成立への期待が高まっています。

本稿においては、「IR推進法案」およびその後に政府提出法案として国会に提出されることになる「IR実施法案」に対する事業者等からの要望について書かせていただきます。

1 選定手続について(*1)

(1)IR推進法案
IRの選定プロセスとしては、IR区域選定先行方式(IR区域選定⇒IR事業者選定⇒カジノ管理委員会への免許申請)IR事業者選定先行方式(IR事業者選定⇒IR区域選定⇒カジノ管理委員会への免許申請)の2つが考えられます。

IR推進法案2条では、以下のとおり、1項でIR事業者によるカジノ管理委員会に対する免許(許可)申請について、2項で地方公共団体による国に対する特定複合観光施設区域(「IR区域」)について規定をしています。

しかしながら、地方公共団体によるIR事業者の選定については全く規定をしておらず、IR区域の選定の後にIR事業者が選定されるのか(IR区域選定先行方式)、それとも、地方公共団体がIR事業者を選定した上で国に対してIR区域の選定の申請をするのか(IR事業者選定先行方式)明らかではありません。

(定義)
第2条 この法律において「特定複合観光施設」とは、カジノ施設(別に法律で定めるところにより第11条のカジノ管理委員会の許可を受けた民間事業者により特定複合観光施設区域において設置され、及び運営されるものに限る。)(中略)民間事業者が設置及び運営をするものをいう。
2 この法律において「特定複合観光施設区域」とは、特定複合観光施設を設置することができる区域として、別に法律で定めるところにより地方公共団体の申請に基づき国の認定を受けた区域をいう。

 
(2)IR議連の考えるプロセスの再確認(IR区域選定先行方式)
国際観光振興議員連盟(「IR議連」)の「IR実施法案の基本的な考え方」では、以下のとおり、IR区域選定先行方式(IR区域選定⇒IR事業者選定⇒カジノ管理委員会への免許申請)の立場をとることを明らかにしています。

○地方公共団体の申請に基づき、国がIRの設置区域・地点を指定する
カジノを含むIRが設置される区域・地点の指定は、地方公共団体による提案・申請をもとに、国がこれを評価・判断し、指定する。この際、国はIR推進について基本方針を策定するなどその方向性を示す必要がある。カジノはこのIRの内部でのみ存在する。

○カジノの施行は民設民営を基本とし、区域指定を受けた地方公共団体が民間事業者を選定する
指定を受けた地方公共団体は、IRを自らの費用とリスクによって整備し、運営する民間事業者を公募により選定することを基本とする。
○民間事業者は別途、国から免許を取得する必要がある
民間事業者は、別途、国に対し申請し、廉潔性、適格性等の審査を経て、免許を取得できた場合、初めてカジノ施設の運営ができることとし、民間事業者による運営行為は国による厳格な規制の対象とする。

 
(3)IR事業者選定先行方式も検討すべき
IR議連は、IR区域選定先行方式の立場を採ることとしていますが、IR推進法案自体は、IR事業者選定先行方式(IR事業者選定⇒IR区域選定⇒カジノ管理委員会への免許申請)を否定しているわけではありません。
実際、IR区域となることを希望している地方公共団体は、すでに外資系のカジノ事業者らと接触を持ち始めており、地方公共団体としてIR事業者を選定した上で、それを前提として、国に対してIR区域の申請をすることを要望しているところもあると聞いております。
以下では、IR区域選定先行方式とIR事業者選定先行方式のメリットと課題について紹介いたします。

〇IR区域選定先行方式とIR事業者選定先行方式のメリットと課題

IR区域選定先行方式 IR事業者選定先行方式
【メリット】
◇IR区域の選定にあたって、IRの中身よりも、当該地方公共団体・区域の特性を重視することができる。
◇小さな地方公共団体でもIR区域に選定されれば、様々なIR事業者(カジノ事業者)の申請を受けられる可能性がある。
◇選定されたIR区域において、すべてのカジノ事業者がIR事業者の選定手続に参画することができる機会がある。
【メリット】
◇IR区域の選定にあたって、選定されたIR事業者の意見を入れて、コンセプト、建造物のデザイン、経済効果など具体的な中身のある提案をすることができる。
◇各地方公共団体のプロポーザルの優劣が明確になり、国においても具体的な中身のある提案であり、選考の判断がし易い。
◇IR事業者の選定にあたって地方公共団体によって、早い段階で背面調査・反社チェックをすることができる。
◇IR区域の選定にあたって、特定のIR事業者との癒着という問題が解消される。
【課題】
◇IR区域の選定にあたって、抽象的な前提に基づくプロポーザルになり、コンセプトや経済効果等の数値が大雑把なものとなる。その結果、どの地方公共団体のプロポーザルも似たり寄ったりのものになる。また、IR区域の具体的な開発のイメージがわきにくい。その結果、国としても選定にあたっての判断が困難になる。
◇IR区域の選定にあたって、特定のカジノ事業者との癒着という問題が生じ得る。(区域選定先行方式を採用した英国の選定手続において実際に問題となった。)
◇地方公共団体によるIR事業者の選定手続の間に、国の側で選定手続を監視する機関が想定されていない。
【課題】
◇マサチューセッツ州やニューヨーク州では、IR区域の選定も含め、カジノ事業者が申請をすることになっているが、IR推進法案では地方公共団体がIR区域の申請主体となるので、この段階でのIR事業者の位置付けが不明確(地方公共団体とIR事業者の共同申請とするのか?)
◇カジノ事業者として、利益相反の観点から、一つの地方公共団体のIR区域にしか参加できないことが比較的早い段階で決まってしまう。
◇十分なIR事業者(カジノ事業者)の申請を得られない地方公共団体はIR区域の選定段階で淘汰されてしまう。
◇IR事業者(カジノ事業者)の申請が経済的な魅力がより大きい大都市に集中し、地方都市への申請がほとんどなされない可能性がある。その結果、国に対して魅力的な提案ができない可能性がある。

 
そこで、IR推進法案が成立後、政府においては、IR区域選定先行方式だけでなく、IR事業者選定先行方式も、IR実施法案の策定において検討していただきたく存じます。

2 一IR区域・複数IR事業者の選定について

IR推進法案は、IR区域に選定された地方公共団体が、いくつの民間事業者をIR事業者として選定するのか明示をしておりません。

この点、IR推進法案2条1項(下記)は、1つの「IR区域」に1つの民間事業者を「IR事業者」として選定することを予定しているようにも読めます(一IR区域・一IR事業者)。

(定義)
第2条 この法律において「特定複合観光施設」とは、カジノ施設(別に法律で定めるところにより第11条のカジノ管理委員会の許可を受けた民間事業者により特定複合観光施設区域において設置され、及び運営されるものに限る。)(中略)民間事業者が設置及び運営をするものをいう。

 
もっとも、国が、各地方公共団体の申請のうち、敷地面積の広いIR区域を選定した場合には、一事業者だけでは敷地が余ってしまい、魅力のあるIRが実現されない可能性もあります。

そこで、一つのIR区域において複数のIR事業者を選定することも許容すべきと考えます。

3 地方のIRについて

(1)大都市型と地方型の区分け
IR推進法案は、都市型のIR・地方型のIRといったIRの選定に関する基準を特に設けていません。

この点、平成26年10月16日の改訂前のIR議連による「IR実施法案の基本的な考え方」においては、『「大都市型」、「地方型」の二類型が構想されることが望ましい。』と記載されていましたが、改訂後は『大都市のみならず地方への設置も検討することが望ましい。』と表現が弱められました。

これは、国によるIR区域の選定基準について、「大都市型」「地方型」と明確に分けるのは困難であるとの判断に基づくものと推測されます。どこまでが「大都市」でどこからが「地方」であるのかという問題もあります。

もっとも、IR区域の選定基準を一律にすると、いわゆる「大都市」のみが選定され、「地方」は選定されないという事態も起こり得ます。

そこで、「大都市」と「大都市以外の市区町村」の区分けをした上で、それぞれの選定基準を策定することが考えられます。

たとえば、「東京都及び政令指定都市」を「大都市」とすることが考えられます。「政令指定都市」とは、政令で指定する人口(法定人口)50万以上の市で、地方自治法252条の19以下に定められた日本の都市制度の一つです。地方自治法上の制度でもあるので、「大都市」としての区分として納得感が得られ易いと思われます。

(2)「大都市」のIR区域のIR事業者に申請をする民間事業者について
仮に、「IR区域選定先行方式」を採用した場合(*2)、国によって「大都市以外の市区町村」のIR区域については、国からIR区域として選定されたとしても、大都市におけるIR区域と比べて、IR事業としての経済的な魅力が少ないとして、民間事業者からIR事業者としての申請が全くなされないか、又はなされたとしても魅力のない民間事業者からの申請のみしかなされない可能性も否定できません。

そこで、「大都市」のIR区域においてIR事業者として申請をする民間事業者に対して、「大都市以外の市区町村」のIR区域におけるIRの申請も併せて義務付けることも一つの選択肢として検討すべきではないかと考えられます。

4 運営委託方式について(*3)

平成27年1月に一般社団法人 関西経済同友会(関西経済同友会)が『「大阪・関西らしい世界初のスマートIRシティ」の実現に向けて-コンセプトの提言-』 として公表した提言書に示された「日本企業が事業に主体的に参画するスキーム」においては、海外のカジノ事業者と共に日本企業が事業に参画する方式として、カジノ事業者が直営、もしくはカジノ事業者に一括して運営委託するのではなく、日本企業が主体的にホテルや商業施設、エンターテイメント等の事業を行うスキームとして提案されています。

海外では、インディアンカジノをはじめとして、運営委託方式は広く行われているところです。

渡邊弁護士-第34回-図表1-20160819

しかし、このスキームは、IR推進法案およびその後に制定される予定のIR実施法案との関係で整合性が取れるのか問題があります。

すなわち、「IR事業者」自体に対しては、①IR区域に認定された地方公共団体によるスクリーニング、②カジノ管理委員会により、厳しい背面調査・免許審査がなされることになります。仮に、「IR事業者」がカジノ事業を100%海外カジノ事業者に運営委託するとすれば、①IR区域認定地方公共団体によるスクリーニング、②カジノ管理委員会による厳しい背面調査・免許審査の潜脱になってしまいます。

渡邊弁護士-第34回-図表2-20160819

そこで、上記図のとおり、IR実施法案において、①IR区域に認定された地方公共団体が、IR事業者に関してその運営委託先も含めて選定審査をすることとし、②カジノ管理委員会による許可(免許)審査手続において、カジノ事業の運営委託先についても背面調査・免許審査の対象とすることが考えられます。

もっとも、日本の法令上、許認可を得た民間事業者が他の事業者に運営委託を認めるようなものは筆者が知る限りありません(公営競技においては、施行者である地方公共団体が民間事業者に運営委託をする例はあります。)。

また、そもそも許認可を得た事業者から運営委託を受けた者に対してどのような許認可制度を設けるのかというこれまでの日本の法制度上想定されなかった問題も生じ得ます。

いずれにせよ、IR実施法案においては運営委託方式の可否を含め検討がなされることが望まれます。

5 特区法案について

IRを2020年に開催される東京オリンピック後に想定される経済的な反動に対する起爆剤として考えるのであれば、IR推進法案およびIR実施法案を早期に成立させるだけでなく、IRに関わる様々な法令上の許認可について一律に規制緩和がなされることが望まれます。

そこで、国によりIR区域に認定された場所については、国家戦略特区等の特別区域に認定した上で、IRに関わる法令上の許認可を規制緩和する特別立法がなされることが望まれます。

6 IR推進法案の附帯決議

以上を踏まえて附帯決議を検討すべきです。

(*1)「第31回 IR地区選定先行方式とIR事業者選定先行方式について」もご覧ください。
IRにおけるゲーミングライセンス制度 第31回 IR地区選定先行方式とIR事業者選定先行方式について
(*2)上記1(3)のとおり、「IR事業者選定先行方式」では、IR事業者(カジノ事業者)の申請が経済的な魅力がより大きい大都市に集中し、地方都市への申請がほとんどなされず、その結果、国に対して魅力的な提案ができない可能性がある。
(*3) 詳細について「第7回 海外カジノ事業者への運営委託に関して」をご覧ください。
IRにおけるゲーミングライセンス制度 第8回「海外カジノ事業者への運営委託に関して」


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
成蹊大学法科大学院 非常勤講師
(金融商品取引法担当、平成20年~)
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員

(主要関連論稿)
『IR導入に当たって検討すべきマネー・ローンダリング、反社会的勢力の関与の問題と提言』(NBL1036号・2014年10月15日号)
『日本におけるカジノ導入とギャンブル依存症問題』(週刊金融財政事情2014年10月6日号(3091号))
『カジノ導入に当たっての論点整理(上)・(下)』(共著)(NBL1014、1015号、2013年12月1日号・12月15日号)
「IR推進法の概要と検討すべき問題点」(週刊金融財政事情2014年1月6日号)
「カジノ法案が想定するビジネスモデルと各種規制」(ビジネス法務2014年3月号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。


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