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IRゲーミング法制度 第36回「IR推進法案の附帯決議 全15項目を解説(速報)」

2016-12-03

【IR資料室】

第36回 IR推進法案の附帯決議 全15項目を解説(速報)

弁護士 渡邉 雅之 (略歴は巻末を参照)

12月2日の衆議院内閣委員会で「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(以下「IR推進法案」といいます。)が可決され、本臨時国会(第189国会)での同法案の成立の可能性高まってきました。

委員の質問やIR推進法案の提出者の答弁においても注目すべきものが多数ありましたが、重要なのは、以下の多数の附帯決議がつけられたことです。これらの附帯決議は、政府によるIR実施法案においても尊重されることになりますので、IR事業に参画を希望する者においてもこれをしっかり分析しておく必要があります。

附帯決議は15項目であり、以下はそれぞれの意義について簡単に説明いたします。

1.特定複合観光施設区域の整備を推進にあたっては、特にカジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響を排除する観点、我が国の伝統文化・芸術を活かした日本らしい国際競争力の高い魅力ある観光資源を整備する観点、並びにそれらを通じた観光及び地域経済の振興に寄与する観点に特に留意すること。

IR推進法案の目的(1条)には規定されていませんが、「我が国の伝統文化・芸術を活かした日本らしい国際競争力の高い魅力ある観光資源を整備する」ということがIR実施法案においては検討がなされることになります。

また、納付金の使途として、

2.政府は、法第5条に基づき必要となる法制上の措置を講ずるにあたり、特定複合観光施設区域の整備の推進の目的の公益性、運営主体の性格、収益の扱い、射幸性の程度、運営主体の廉潔性、運営主体の公的管理・監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止等の観点から、刑法の賭博に関する法制との整合性が図られるよう十分な検討を行うこと。

内閣委員会の質疑でも繰り返し質問されましたが、賭博行為や富くじ販売行為は刑法で禁じられているところ、公営競技(競馬・競輪等)に関しては、特別な法律により「正当行為」(刑法35条)として違法性が阻却されています。過去の法務大臣・法務大臣政務官の答弁参考とすれば、違法性を阻却する要件として考慮すべき事項は次の8点です。

①目的の公益性
②運営主体の性格
③収益の扱い
④射幸性の程度
⑤運営主体の廉潔性
⑥運営主体の公的管理監督
⑦運営主体の財政的健全性
⑧副次的弊害の防止

IR推進法案は民設民営の完全民営カジノを目指すものです。IR推進法案自体は、政府における法制(IR実施法案)を求めるものに過ぎず、違法性阻却は認められません。今後、政府が策定するIR実施法案において、上記の8点について検討した上で、違法性阻却を図ることになります。

3.特定複合観光施設区域に関しては、国際的・全国的な視点から真に観光及び地域経済の振興の効果を十分に発揮できる規模のものとすること。

4.特定複合観光施設区域の数については、我が国の複合観光施設としての国際的競争力の観点及びギャンブル等依存症予防の観点から厳格に少数に限ることとし、区域認定数の上限を法定すること。

上記の2つの附帯決議により、政府が策定するIR実施法においては、特定複合観光施設区域(以下「IR区域」といいます。)、区域内施設について、一定以上の規模感と施設内容の要件が設けられると考えられます。
また、区域数の上限が数値として定められ、当初は少数に限定した上で、段階的に検証を経た上で設置されることになるものと考えられます。

5.地方公共団体が特定複合観光施設区域の認定申請を行うにあたっては、公営競技の法制にならい、地方議会の同意を要件とすること。

6.特定複合観光施設区域の整備が真に観光及び地域経済の振興に寄与するため、また、特定複合観光施設の設置の前提として、犯罪防止、治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないようにするため、特定複合観光施設区域の整備の推進における地方公共団体の役割を明確化するよう検討すること。

IR区域の認定申請の前提として、地方議会の同意が必要であることが、政府が策定するIR実施法案には規定されることになります。

また、IR推進法案では、IR区域を設置する地方公共団体の役割が不明確ですが、「犯罪防止、治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないようにするため」、政府が策定するIR実施法案でその役割が明確化されることになります。

7.カジノ施設の設置及び運営をしようとする者その他カジノ施設関係者については、真に適確な者のみが選定されるよう、厳格な要件を設けると共に、その適合性について徹底的した調査を行うことができるよう法制上の措置を講ずること。また、カジノ施設を含む特定複合観光施設全体の健全な運営等を確保するため、事業主体としての一体性及び事業価値等の廉潔性が確保されるよう法制上の措置を講ずること。

国際観光産業振興議員連盟(以下「IR議連」といいます。)の「特定複合観光施設区域整備法案(仮称)~IR実施法案~に関する基本的な考え方」(以下「IR実施法案の基本的な考え方」といいます。)にも示されていましたが、カジノ施設関係者に国際的スタンダードに準拠した厳格な背面調査が導入されることになります。

8.依存症予防等の観点から、カジノには厳格な入場規制を導入すること。その際、諸外国におけるカジノ入場規制のあり方やその実効性等を十分考慮し、我が国にふさわしい清廉なカジノ運営に資する法制上の措置を講ずること。

9.入場規制の制度設計にあたっては、個人情報の保護との調整を図りつつ、個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第2条第7項に定める個人番号カード)の活用を検討すること。

上記8・9はいずれもカジノへの入場規制についての附帯決議です。

上記8はシンガポールで導入されている排除システム(自己排除・家族排除・第三者排除)や入場料規制を念頭に置き、その実効性を検証した上で、政府の策定するIR実施法案において定めることとされています。

上記9は画期的な附帯決議であり、個人番号カード(マイナンバーカード)の有する顔写真・電子認証を用いて、未成年者や依存症患者等の排除をすることを想定しています。福田峰之議員(自由民主党・無所属の会)の質問を念頭においた附帯決議です。

筆者も「第32回 カジノ施設におけるマネー・ローンダリング対策・反社対策の提言」において、「当初の会員登録時には、顔写真付き身分証明書(日本人であれば、運転免許証・マイナンバー制度における個人番号カード、外国人であればパスポート)での登録を求めるべきでしょう。

顔写真付きの身分証明書を有しない顧客については原則カジノ施設への入場を拒否すべきです。運転免許証やパスポートを所持しておらず健康保険被保険者証などの顔写真なしの身分証明書しか所持していない者であっても、2015年1月以降に、マイナンバー制度が施行された後は、希望すれば、市区町村の窓口で顔写真付きの個人番号カードを取得できるのですから、これを所持している場合のみ会員となれることにすべきです」と指摘したところです。

10.ギャンブル等依存症患者への対策を抜本的に強化すること。我が国におけるギャンブル等依存症の実態把握のための体制を整備すると共に、ギャンブル等依存症患者の相談体制や臨床医療体制を強化すること。加えて、ギャンブル等依存症に関する教育上の取り組みを整備すること。また、カジノに留まらず他のギャンブル等に起因する依存症を含めて関係省庁が十分連携して包括的な取組みを構築し、強化すること。

ギャンブル等依存症対策については、実態調査をするほか、依存症患者の相談・臨床医療体制を強化すること等の抜本的な体制を強化することとされました。また、公営競技やパチンコ・パチスロなどの依存症も含めた包括的な依存症対策を策定することをIR実施法案に求めています。

11.法第9条及び法第10条に定める各種規制等の検討にあたっては、諸外国におけるカジノ規制の現状等を十分踏まえると共に、犯罪防止、治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないよう、世界最高水準の厳格なカジノ営業規制を構築すること。

カジノの負の影響に関して、世界最高水準の厳格なカジノ営業規制を設けることをIR実施法案に求めています。

12.カジノ管理委員会は独立した強い権限を持ついわゆる「三条委員会」として設置し、カジノ管理委員会がカジノの営業規制を厳格に施行できる体制の構築が不可欠であり、特にカジノ導入時から厳格な規制を執行できるよう十分な機構定員を措置すると共に、適切な人材を配置するほか、厳格なカジノ営業規制等や関係事業者に対する行政処分等の監督を有効に執行できる人材育成のあり方も検討すること。また、特定複合観光施設の設置の前提として、犯罪防止、治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないようにするため、都道府県警察その他関係機関の必要な体制を確保すると共に、カジノ管理委員会とこれらの関係機関の連携体制を確保すること。

カジノ管理委員会をいわゆる「三条委員会」(正確には内閣府設置法49条の機関)として、独立の委員会とし、十分な機構定員を確保することを政府の策定するIR実施法案に求めています。

13.カジノの運営主体が民間事業者になることに鑑み、カジノ事業者に適用される税制・会計規則等につき、諸外国の制度を十分に勘案の上検討を行うこと。

カジノの税制や会計規則は国際的なスタンダードに基づくものであることをIR実施法案に求めています。

14.法第12条に定める納付金を徴収することとする場合は、その使途は法第1条に定める特定複合観光施設区域の整備の推進の目的と整合するものとすると共に、社会福祉、文化・芸術の振興等の公益のためにも充てることを検討すること。また、その制度設計にあたっては、依存症対策の実施をはじめ、法第10条に定める必要な措置の実施に十分に配慮した検討を行うこと。

法令や条例において納付金を徴収する場合には、使途として「社会福祉、文化・芸術の振興等の公益のためにも充てること」、「依存症対策」に充てること等が、政府が策定するIR実施法案で定められることになります。

15.以上を含め、法第5条に定める必要となる法制上の措置の検討にあたっては、十分に国民的な議論を尽くすこと。

IR実施法案の定める法制について、国民的な議論をすることを求めています。政府が今後設ける推進本部や有識者会議で議論するほか、パブリックコメントなどを活用して国民の意見を聴取していくことが考えられます。


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
成蹊大学法科大学院 非常勤講師
(金融商品取引法担当、平成20年~)
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員

(主要関連論稿)
『IR導入に当たって検討すべきマネー・ローンダリング、反社会的勢力の関与の問題と提言』(NBL1036号・2014年10月15日号)
『日本におけるカジノ導入とギャンブル依存症問題』(週刊金融財政事情2014年10月6日号(3091号))
『カジノ導入に当たっての論点整理(上)・(下)』(共著)(NBL1014、1015号、2013年12月1日号・12月15日号)
「IR推進法の概要と検討すべき問題点」(週刊金融財政事情2014年1月6日号)
「カジノ法案が想定するビジネスモデルと各種規制」(ビジネス法務2014年3月号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。


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