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IRゲーミング法制度 第38回「マネー・ローンダリングのリスクはコントロール可能」

2016-12-07

【IR資料室】

第38回 カジノのマネー・ローンダリングのリスクはコントロールできる

弁護士 渡邉 雅之 (略歴は巻末を参照)

平成28年12月6日の衆議院本会議での可決に続き、12月7日には、参議院本会議で趣旨説明と質疑が行われました。これにより12月8日には参議院内閣委員会で審議が行われることになりますが、参議院独自の附帯決議としてマネー・ローンダリング対策に関する事項が盛り込まれる模様です。

本稿においては、カジノにおけるマネー・ローンダリングのリスクについて説明するとともに、それに対するリスクコントロールの手段について解説いたします。

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1 マネー・ローンダリングとは

「マネー・ローンダリング」(money laundering)とは、日本語に訳すと「資金洗浄」のことです。犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、警察などの捜査機関による発見・検挙を免れようとする行為のことをいいます。

たとえば、違法賭博や売春、そして振り込め詐欺などの犯罪行為で獲得した経済的利益を、犯罪者がそのまま使えば足がつくおそれがあり、そのままの状態では自由に使うことができません。
このため、このような「汚れたお金」を、何らかの方法により、表の世界で堂々と使うことができる「きれいなお金」にする必要があります(その一部は再び犯罪行為の資金に用いられます)。
そこで、送金や両替などの金融取引、商取引、クレジットカード取引などを経由することにより、資金の出所をあやふやにして「資金」を「洗浄」する行為が行われます。これが「マネー・ローンダリング」です。

マネー・ローンダリング対策に関する政府間会合であるFATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)の報告書において、カジノは金融機関の取引と並んでマネー・ローンダリングのリスクが高いものとされています。

マネー・ローンダリングのプロセスには「プレースメント」「レイヤリング」「インテグレーション」という共通点があります。

プレースメント」とは、犯罪によって得たお金(犯罪収益)を金融システムや合法的な商取引の流れに取り込むプロセスのことです。たとえば、銀行の偽名・架空名義の口座に犯罪収益である現金を入金する方法のことです。「プレースメント」の手続の中で、現金を小口に分けることにより、本人確認を避けるような手法を「ストラクチャリング」といいます。
レイヤリング」とは、金融システムに取り込まれた犯罪収益を、その出所を分からなくするためのプロセスです。たとえば、銀行の預金口座から複雑な送金取引を繰り返すような場合です。
インテグレーション」とは、出所を分からなくした犯罪収益を、合法的なビジネスによる収益であるかのように偽装することにより、再び表の経済に「統合」させるプロセスです。これにより、犯罪収益を表の世界で利用したり、再び犯罪の資金源とすることが可能となります。

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「振り込め詐欺」においては、犯罪行為がそのまま、資金の隠匿につながるので、「プレースメント」と「レイヤリング」が同時に行われることになります。

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2 カジノにおけるマネー・ローンダリング

(1)カジノにおけるマネー・ローンダリングの手法と兆候

FATFが2009年3月に公表した”Vulnerabilities of Casinos and Gaming Sector”(*1)(「カジノ及びゲーミング分野における脆弱性」、以下「FATF報告書」という)において、カジノにおけるマネー・ローンダリングの手法と兆候について具体的に報告しています。

ア カジノにおけるチップ等の金銭的価値のあるものの使用
この手法は、カジノにおいてチップ等の金銭的価値のあるものを使用してなされるものです。すなわち、麻薬で得た収益などの犯罪収益をカジノのゲームチップに交換し、ほとんどまたは全くカジノでプレーをしないで、カジノの賞金として現金化または小切手化する手法等です。複数の者が、ルーレット、バカラ、クラップスといったテーブルゲームで、両サイドに同じ金額を賭けるといった手法もあります。

イ ストラクチャリング
この手法は、多額の金額をカジノにおいて小口の取引に分けて行い、報告義務が課される敷居値未満の取引をする方法です。代理人を用いる場合等もあります。
なお、ストラクチャクチャリング防止のために、平成28年10月に施行された犯罪による収益の移転の防止に関する法律においては、取引時確認に一定の敷居値(例えば外貨両替では200万円、現金振込では10万円)がある場合に、これを避けるため、二以上の取引が1回当たりの取引の金額を減少させるために一の取引を分割したものであることが一見して明らかである場合には、合算して敷居値を超えるか判断することとなりました。

ウ 精錬(リファイニング)
この手法は、マネー・ローンダラーや犯罪組織が、カジノ取引を利用して、犯罪で得た低い額面金額の紙幣を、高い額面金額の紙幣に交換する手法であります。

エ その他
その他にも、「カジノ口座及びクレジット・ラインの利用」、「勝ちゲームの買取り」、「外貨両替の利用」、「従業員との共謀」、「クレジットカードやデビットカードの利用」、「書類の偽造」といったカジノにおけるマネー・ローンダリングの方法が報告されています。

(2) ジャンケットによるマネー・ローンダリング

上記(1)のマネー・ローンダリングの手法と並んで(またはこれらを利用して)、マネー・ローンダリングに関して問題とされているのはジャンケット制度(*2)です。

「ジャンケット」(junket)とは、マカオにおいて発展したものであり、中国語の「進家」(Jin-Ke、顧客を紹介すること)を語源とし、VIP顧客をカジノに送客し、カジノ事業者からコミッションを得る仕組みです。ジャンケット事業者は、外部事業者であり、カジノ事業者のリスクの一部を引き受け(マーケティングコストおよび与信リスク)、サービシング(債権回収行為)も担います。すなわち、VIP顧客のマーケティングエージェント、貸金業者、サービサーの役割を果たしています。

マカオのVIPルームにおいては、カジノ事業者、VIP顧客、VIPゲーミングプロモーター、ジャンケット事業者の4者間の契約関係からなります。ジャンケット事業者は実際には下請け業者がおり、ねずみ講のように複数層をなしています。VIPゲーミングプロモーターはジャンケット事業者の元締めのような役割を果たします。VIPゲーミングプロモーターは、当局から許認可を受け規制の対象となっていますが、VIPゲーミングプロモーターから委託を受けた(下請けの)ジャンケット事業者は、規制の対象となっていません。

FATF報告書において、ジャンケット事業者はマネー・ローンダリングの高リスク主体として指定されています。特にマカオのカジノは、カジノ売上のうち、約67%がVIP顧客からの収益であり、中国本土で高級官僚たちがかき集めた裏金などが恒常的にローンダリングされている疑いがもたれている。
象徴的な出来事としては、2014年3月7日、英国プレミアリーグのバーミンガム・シティの元オーナーであったカーソン・ユン(Carson Yeung)が、香港の地方裁判所において、マカオのカジノにおいて2001年から2007年にかけて721.3百万香港ドル(93百万米国ドル)ものマネー・ローンダリングをした罪で6年の懲役刑を受けたところです。

中国本土では、人民元の送金規制がなされているので、中国本土からマカオへ、マカオから中国本土への資金の流れについては、ジャンケット事業者が地下銀行と結託してなされることがあります(FATF報告書)。

また、VIPルームにおいてジャンケットは顧客に対して、デッドチップ(dead chip)を貸与するので、事後的に貸与額を中国本土において支払うことによっても、事実上の送金ができる。
中国本土では、カジノの債務を取り立てることが法律で禁止されているが、ジャンケット事業者は、VIP顧客が返済できない場合は、三合会(三合會)などの香港の犯罪組織と結託し、当該VIP顧客を監禁し、家族が支払うまでは解放しないという事例もあるといいます(FATF報告書)。

VIPルーム内でのマネー・ローンダリングは、全部または一部、ギャンブルをしていないのにもかかわらず、確認をせずにギャンブルの賞金であるとして換金されるといった方法によりなされます(FATF報告書)。換金して、地下銀行を通じて中国に持ち帰ることもあるし、海外の口座に送金することもあります。

3 わが国におけるマネー・ローンダリング規制

わが国においては、犯罪による収益の移転の防止に関する法律(以下「犯収法」といいます。)において銀行等の「特定事業者」にマネー・ローンダリング対策を求めています。

犯収益法により特定事業者に課せられる義務は、大きく分けて、①顧客の取引時確認(同法4条)、②確認記録・取引記録の作成・保存義務(同法6条、7条)、③疑わしい取引の届出義務(同法8条)の3つです。

銀行などの特定事業者は、預金口座の開設、融資取引、送金などの特定取引をするに際して、顧客の本人特定事項(自然人の氏名・住居・生年月日、法人の名称・本店/主たる所在地)、取引を行う目的、職業(自然人)・事業内容(法人)、(法人の)実質的支配者の本人特定事項の確認を行います。法人取引や代理取引については、代表者等(取引担当者)の本人特定事項および代表者等が顧客等のために特定取引等の任に当たっていると認められる事由の確認を行います。

特定事業者は取引時確認により得た情報に関する確認記録や取引の期日・内容等に関する取引記録を作成し、これを一定期間保存します。

特定事業者は、取引時確認の結果や取引開始後のモニタリングその他の事情を勘案して、特定業務において収受した財産が犯罪による収益である疑いがある場合には、所管当局(銀行の場合は金融庁)に疑わしい取引の届出をします。

疑わしい取引の届出に関する情報はわが国における資金情報機関(FIU)の業務を担っている警察庁の犯罪収益移転防止対策室(JAFIC:Japan Financial Intelligence Center)に集約され、JAFICは届出情報の整理・分析を行います。その中で犯罪の嫌疑が強いものについては、捜査機関に情報提供され、捜査機関は捜査・調査の上、暴力団等の犯罪組織から犯罪収益を没収・追徴します。

犯収法に基づく取引時確認、確認記録・取引記録の作成・保存、疑わしい取引の届出は、以上のプロセスの中でマネー・ローンダリングの防止に役立っているのです。
IR事業者も、犯収法上の特定事業者として以上の取引時確認等の措置を講ずることになります。

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4 IR推進法案と「IR実施法案の基本的な考え方」

特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(「IR推進法案」)では、カジノ施設におけるマネー・ローンダリングを防止するために、政府に対して以下の措置を求めています(同法案10条2号)。

カジノ施設において用いられるチップその他の金銭の代替物の適正な利用に関する事項

 
マネー・ローンダリングという用語は用いられていませんが、本号は政府に対してマネー・ローンダリング対策を講ずることを求める規定です(平成28年12月8日参議院内閣委員会における和田政宗議員(自民)の質問に対する法案提出者(岩屋毅衆議院議員)の回答)。この点を明確化するためにもマネー・ローンダリング対策に関する附帯決議がなされることは歓迎できます。

国際観光産業振興議員連盟(以下「IR議連」といいます。)の「特定複合観光施設区域整備法(仮称)~IR実施法案~に関する基本的な考え方」)では、カジノ施設内でのマネー・ローンダリング対策に関して以下のとおり記載されています。

●マネーロンダリング(資金洗浄)を防止する。
 カジノ施設は諸外国では国際機関であるFATF(金融行動タスクフォース)勧告に基づき、疑似金融機関と位置づけられており、一定金額以上の賭け金行動をする個人の本人確認、疑わしい行為等の規制当局に対する報告義務等マネーロンダリングを防止する枠組みが法定されている。わが国もFATF勧告に基づく制度が存在し、カジノ施設をこの中に追加することにより、先進諸外国と同等の規制によりマネーロンダリングを防止することとする。

 

5 カジノ施設におけるマネー・ローンダリング対策の必要性

カジノの顧客は、銀行などの金融機関における取引と比べて、「一見顧客」が「継続顧客」に比べて圧倒的に多いという点に特殊性があります。

また、銀行取引のように、窓口で一定の時間をかけて、あるいは、数日かけて、顧客スクリーニングや反社チェックをして初めて取引が開始されるのではなく、(米国のネバダ州のカジノなどでは)入場約款を前提として、入場によって自由にカジノ施設内でテーブルゲームやスロットマシーンでプレーをすることができる点も特殊性があります。

マネー・ローンダリングの観点では、さまざまなテーブルゲームやスロットマシーンでプレーをすることにより、カジノ施設内での顧客の資金の流れが不明確になってしまうという問題があります。ジャンケット制度(顧客のプロモーション、与信・債権回収をする事業者)が関わるとこの点が益々不明確になります。

このように、カジノ施設内でのマネー・ローンダリング対策は難易度を伴うものであり、現在、カジノの導入にあたって問題となっているギャンブル依存症と同等に、または、それ以上に真剣に検討すべき課題と考えられます。

6 提言

カジノ施設内でのマネー・ローンダリング対策について、筆者は以下のような制度を提言いたします。

(1)マイナンバーカード等の顔写真付本人確認書類によるカジノ施設への入場時の本人特定事項の確認

日本国籍を有する者と中長期在留者・特別永住者に限らず、また、一見顧客か継続顧客に限らずに、外国人観光客についても入場に顔写真付の本人確認書類により本人特定事項(氏名、住居、生年月日)の確認をすべきです。

これはシンガポールにおいて行われており、シンガポール国民/永住権保持者については、(キオスクにおいて入場税を支払うと共に)「シンガポール国民/永住権保持者レーン」において、国民登録番号(NRIC)カード、運転免許証等をかざしてカジノ場内に進めます。外国人については、「Foreigner」(外国人)レーン」から入場する際にパスポート等の顔写真付の本人確認書類を提示することによりカジノ場内に入場できます。

顔写真付き身分証明書としては、日本人であれば、運転免許証・マイナンバー制度における個人番号カード、外国人であればパスポートでの確認を求めるべきでしょう。顔写真付きの身分証明書を有しない顧客についてはカジノ施設への入場を拒否すべきです。

衆議院の附帯決議においても、以下のとおり、入場規制において個人番号カードを用いることとされています。

入場規制の制度設計にあたっては、個人情報の保護との調整を図りつつ、個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第2条第7項に定める個人番号カード)の活用を検討すること。

 

(2)カジノ施設内での資金の流れの捕捉

個人番号カードの電子認証や専用カードや各テーブルやスロットマシーンのバウチャーを用いて、顧客がスロットマシーンや各テーブルでプレーをする場合、ベットした金額・勝ち・負けをすべてカードで捕捉し管理することも考えられます。これにより、カジノ施設内での顧客のお金の流れを捕捉することができ、ストラクチャリング(敷居値未満の取引をして取引時確認を避ける)やほとんどプレーをしない現金の引出しなどのマネー・ローンダリングを防ぐことが可能となります。

(3)取引時確認の金額と高額取引の報告義務

以下の取引について、FATFが推奨する3000米ドル以上の取引(日本円では30万円と設定)について、取引時確認・確認記録の作成・保存だけでなく、当局(カジノ管理委員会)への報告義務も課するべきです。

◇現金をチップと交換する場面
◇チップを現金と交換する場面
◇フロント・マネー(預託金勘定)を設定する場面
◇クレジット・ライン(与信枠)を設定する場面

高額取引の報告義務は、日本の犯収法にはない制度ですが、米国(1万米ドル以上の報告義務)、シンガポール(1万シンガポールドル(7,032米ドル)以上の報告義務)、マカオ(50万マカオパタオ(62,587米ドル)以上の報告義務)にはあり、マネー・ローンダリングの抑止に一定程度役に立っていると考えられることからこれを導入すべきです。

(4)ジャンケット制度は導入すべきではない

ジャンケット制度(特にマカオのジャンケット制度)には、負の面が多く、IRの導入にあたっては見送るべきであると考えます。

ジャンケット制度については、マネー・ローンダリングの問題だけでなく、反社会的勢力の関与、高利貸しによる貸金業法違反といった問題も出てきます。カジノ債務の取立てに関しては、中国本土の(違法な)サービサーに債権譲渡をすることにより、日本国内の弁護士法などの法律の直接の対象とならなくても、現地法の違反のほか日本のIRに関連してこのような問題が生ずることは到底許されるものではありません(これはカジノ事業者であっても同じ)。
また、ジャンケットが反社会的勢力の資金源となる可能性も否定できません。

ジャンケット制度を設けない結果として、中国本土などのVIP顧客を誘客できないとしても、ジャンケット制度の負の面を抑止することの利益のほうが大きいと思われます。

シンガポールが導入したInternational Market Agentのように、①二次請け以下のジャンケットの禁止(カジノ事業者との直接契約のみ)、②顧客への与信行為の禁止、③コミッションの分割の禁止、④顧客の個人情報の取得義務、⑤カジノ事業者への報告義務などを課すことにより、ジャンケット制度の負の面を抑止できるのではないかとも考えられます。

しかし、海外の大手のカジノ事業者にとっては、このようなジャンケットは自社の営業職員とほとんど違いがなく魅力がないものです。Las Vegas SandsはシンガポールのMarina Bay Sandsにおいて、International Market Agentを導入していませんが、その理由について同社のCEOであるSheldon Adelson氏は、「シンガポールでは(許認可を受けたジャンケット事業者のことを)International Market Agentというが、それは言葉のとおりだ。彼らは営業職員にすぎない。彼らは信用供与ができないし、コミッションの分割もできない。すなわち、我々の100人超の営業職員と同じにすぎない」と発言したと言われています。

規制当局(カジノ管理委員会)の観点でも、カジノ事業者の営業職員のほうが監督し易いです。シンガポールも2010年に二つのカジノを開業後、2年経った2012年に同制度を導入したことに鑑みれば、IR導入時にただちに同制度を導入するのではなく、慎重に検討すべきです。

7 終わりに

マネー・ローンダリングのリスクは「犯罪による収益の移転の防止に関する法律」上の取引時確認等の措置のほか、上記の提言のような措置等を通じて、十分コントロールできるものと考えられます。

本稿では紹介していませんが、マネー・ローンダリング対策は反社会的勢力排除対策と一体としてなされるべきものです。この点については、「第32回 カジノ施設におけるマネー・ローンダリング対策・反社対策の提言」をご覧ください。

IRにおけるゲーミングライセンス制度 第32回「カジノ施設におけるマネー・ローンダリング対策・反社対策の提言」

(*1)http://www.fatf-gafi.org/media/fatf/documents/reports/Vulnerabilities%20of%20Casinos%20and%20Gaming%20Sector.pdf
(*2)ジャンケット制度に関しては、主としてWuyi Wang and William R. Eadington “VIP-room Contractual System of Macau’s Traditional Casino Industry”( UNR Economics Working Paper Series Working Paper No. 07-001 )(http://www.business.unr.edu/econ/wp/papers/unreconwp07001.pdf)を参考にしている。


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
成蹊大学法科大学院 非常勤講師
(金融商品取引法担当、平成20年~)
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員

(主要関連論稿)
『IR導入に当たって検討すべきマネー・ローンダリング、反社会的勢力の関与の問題と提言』(NBL1036号・2014年10月15日号)
『日本におけるカジノ導入とギャンブル依存症問題』(週刊金融財政事情2014年10月6日号(3091号))
『カジノ導入に当たっての論点整理(上)・(下)』(共著)(NBL1014、1015号、2013年12月1日号・12月15日号)
「IR推進法の概要と検討すべき問題点」(週刊金融財政事情2014年1月6日号)
「カジノ法案が想定するビジネスモデルと各種規制」(ビジネス法務2014年3月号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。


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