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IRゲーミング法制度 第39回「IR推進法では”カジノ”の定義を設けるべきではない」

2016-12-09

【IR資料室】

第39回 IR推進法では”カジノ”の定義は設けるべきではない

弁護士 渡邉 雅之 (略歴は巻末を参照)

平成28年12月8日の参議院の内閣委員会において、白眞勲参議院議員(民進)から、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(以下「IR推進法案」といいます)において、「”カジノ”の定義がなされていない」との主張をされていました。

しかしながら、筆者は、以下のとおり、IR推進法案において”カジノ”の定義を設ける必要はなく、むしろ設けるべきではないと考えます。

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1 カジノの起源・意義

「カジノ」(casino)という用語の語源は、イタリア語の「Casa」(小さな家を意味します。)で、もともとは王侯貴族が所有していた社交用、娯楽用の別荘を意味していました。これが時代の変遷とともに娯楽施設を備えた遊戯社交場の性格を強め、産業革命以降には一般大衆を対象とした集会場がヨーロッパ各地に誕生してカジノと呼ばれるようになりました。

「広辞苑(第5版)」(岩波書店)においても、「カジノ」は「ルーレット・カード・ダイスなどを備えた公認の賭博場。もと、ダンスなどの娯楽設備のある集会所」と定義がされています。

2 海外の法令におけるカジノ(Casino)の定義

筆者が調べたところ、ネバダ州、ニュージャージー州、シンガポールにおいては、法令においてカジノ(Casino)は次のように定義されています。

〇米国ニュージャージー州のCasino Control Act
5:12-6 “Casino” or “casino room” or “licensed casino” — One or more locations or rooms in a casino hotel facility that have been approved by the division for the conduct of casino gaming in accordance with the provisions of this act, including any part of the facility where Internet gaming is conducted, pursuant to rules established by the division.
(訳文)
5:12-6 「カジノ」、「カジノルーム」又は「免許が付与されたカジノ」— この法律の規定に従いカジノゲームを行うためにゲーム執行局により承認されたカジノホテル施設の一つ以上の場所又は部屋をいい、ゲーム執行局により定められた規則に従いインターネットゲームがその場所の一部で行われているものを含む。

〇シンガポールのCasino Control Act
“casino” means any premises, or part of premises, within a designated site where persons may participate in one or more games approved by the Authority under section 100;
(訳文)
「カジノ」とは、個人が第100条に基づき当局に承認された1つ以上のゲームに参加するために指定された用地内の施設又は施設の一部をいう。

 
ニュージャージー州とシンガポールの法令では、カジノで行われる「ゲーム」(game)については別途定義がなされています。すなわち、「ゲーム」の定義を前提として「カジノ」の定義がなされています。その定義の仕方は以下の通り、かなり異なります。

〇米国ニュージャージー州のCasino Control Act
5:12-21 “Game” or “gambling game”
“Game” or “gambling game” – Any banking or percentage game located within the casino or simulcasting facility played with cards, dice, tiles, dominoes, or any electronic, electrical, or mechanical device or machine for money, property, or any representative of value
(訳文)
5:12-21 「ゲーム」又は「ギャンブリングゲーム」- カジノ場内又は同時放送により行われる、トランプ、サイコロ、パイ、ドミノ、金銭、財産その他の個別の価値のある電子的機器を用いて行われる積み上げによる又は割合的なゲームをいう。

〇シンガポールのCasino Control Act
“game” means a game of chance or a game that is partly a game of chance and partly a game requiring skill;
(訳文)
「ゲーム」とは、偶然によるゲームまたは部分的に偶然及びスキルによるゲームをいう。

 

3 わが国の法令において用語の定義をする場合

法令における用語について定義を設けるのはどのような場合かについて、『ワークブック法制執務(全訂)』(前田正道 編)(ぎょうせい)73頁には以下のとおり記載されています。

法令、特に法律において用語を使用しようとする場合、その用語について、社会通念からすれば、その意義に広狭があり、あるいはいろいろに解釈される余地があるということがある。このような用語について、その法令において用いる特定の意義、用法を確定し、明らかにしておくことは、法令を分かりやすくし、また解釈上の疑義を少なくするために特に必要なことである。法令において用語についての定義が設けられるのは、このような用語についてである。

これに対して、社会通念上、一定の意味を有する用語を法令においてもそのまま使用しても特に紛れがないと考えられる場合には、その用語を定義する必要はなく、このような用語についてまでその定義を置くときはかえって法令を分かりにくくすることがあることに留意しなければならない。

 

4 IR推進法案において「カジノ」を定義する必要はあるか

筆者が法令検索をしてみたところ、「カジノ」という用語を用いる法令は現在のところありません。したがって、「カジノ」の定義を設ける法令も当然ながらありません。

しかしながら、以下の理由により、IR推進法案の中に「カジノ」の定義を設ける必要はなく、むしろIR推進法案で定義をするのは適当ではなく、IR実施法案において定義すべき事項であると考えます。

(1)社会通念上の意義
まず、「カジノ」という用語の意味については、定義がなくても社会通念上、カードゲーム、ルーレット、スロットマシーン等のゲームが行われる場所ということは比較的明確であると考えられます。

(2)基本法としての性格
IR推進法案は基本法であり、同法案5条により、政府が1年を目途として講ずべき法制上の措置(すなわち、IR実施法案)を求めるものです。
IR実施法案においては、カジノで行われる「ゲーム」の定義もした上で「カジノ」の定義がなされることになると考えられます。また、(ネバダ州の法令のように)その場内にあるバーやラウンジカクテル等の施設も含めてカジノの一部を構成するのか明確化する必要があるかもしれません。
これに対して、もし、基本法であるIR推進法案で「カジノ」の定義をしようとすると、そこで行われる「ゲーム」についても定義をする必要が出てきますが、これはIR実施法案において厳密に検討すべき事項です。

5 IR推進法案は法制局の審査を経ている

IR推進法案は議員立法ですが、法案提出にあたって衆議院法制局の審査を経ているもので、そこで法形式についてはお墨付きを経た上で国会に提出されたものです。

法制局においてもIR推進法案に「カジノ」の定義が設けられていないことについて、上記4のような検討をした上で提出がなされたものと思われます。


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
成蹊大学法科大学院 非常勤講師
(金融商品取引法担当、平成20年~)
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員

(主要関連論稿)
『IR導入に当たって検討すべきマネー・ローンダリング、反社会的勢力の関与の問題と提言』(NBL1036号・2014年10月15日号)
『日本におけるカジノ導入とギャンブル依存症問題』(週刊金融財政事情2014年10月6日号(3091号))
『カジノ導入に当たっての論点整理(上)・(下)』(共著)(NBL1014、1015号、2013年12月1日号・12月15日号)
「IR推進法の概要と検討すべき問題点」(週刊金融財政事情2014年1月6日号)
「カジノ法案が想定するビジネスモデルと各種規制」(ビジネス法務2014年3月号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。


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