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IRゲーミング法制度 第42回「IR推進会議取りまとめ」ポイント~入場回数の制限について

2017-08-23

【IR資料室】

筆者:弁護士 渡邉 雅之(略歴は巻末を参照)

本連載では、2017年7月31日に公表された『特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ』(*1、以下「本取りまとめ」) のうち、事業者や地方公共団体の関心の高い論点について解説するものです。
筆者は、同委員会の委員ではありますが、本稿における意見は筆者の私見に留まるものであり、同委員会全体及び特定複合観光施設区域整備推進本部の見解ではないことに留意してください。
第1回目では、事業者から反対が多い論点の一つである「入場回数の制限」について解説いたします。

1 入場回数制限の導入と考え方

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下「推進法」といいます。)10条2項は、外国人旅行客以外の者について、一律にカジノ施設の入場を禁止することとはせず、カジノ施設の利用による悪影響を防止する観点から、カジノ施設への入場が可能な者の範囲を設定することを求めています。

入場回数は、カジノ施設への入場に当たって本人確認を厳格に行うことにより、客観的に把握できる指標です。

一般論として入場回数が多くなるにつれて、依存が進むリスクがなると考えられる。依存防止の観点からは、IR区域の数やカジノ施設の数・規模を限定した上で、さらに顧客に対して常態的にカジノ施設に入場できる環境を創らない(常態的にカジノ行為に触れさせない)ことが必要かつ効果的です。

入場回数制限としては、韓国では、韓国国民が唯一入場できるカンウォンランドカジノにおいて、事業者による自主的措置として、1か月の入場回数が15日を超えた者は、その月の月末までカジノ施設への入場が禁止されています。

入場管理方法としては、シンガポールにおいては、カジノに入場ゲートを設け、NRIC(国民及び永住者一人一人に固有の番号を付与しているところ、当該番号、顔写真、氏名、生年月日、住所等が記載されたカード)を活用して本人確認を行い、入場管理を行っています。

我が国の既存の公営競技においては、競技実施回数を多段階で規制しており、最も細かな規制が課されている競艇においては、競走場ごとに「年間の開催回数」、「月間の開催回数」、「1回の開催日数」、「1日の競走回数」について規制しています。

そこで、カジノ施設へのアクセスが比較的容易である日本人及び国内居住の外国人に対して入場回数制限を設け、常態的にカジノ施設に入場できる環境をつくらないことが適切です。外国人旅行客には、入場回数制限は設けることは想定していません。

カジノ施設への入場回数制限については、一か月程度の長期間における回数制限と、一週間程度の短期間における回数制限を組み合わせて設けるべきであり、具体的な制限値については、諸外国の例も踏まえ検討すべきです。
また、入場回数については、24 時間以内を「1回」と数えることとすべきです。

入場回数制限については、IR事業者の事業性にも影響するとして、推進派においても異論が多い論点の一つです。本取りまとめでは、1か月、1週間の入場回数が示されていませんが、実施法(又は政令等)において回数がどのように設定されるかが注目されます。

2 カジノ管理委員会による入場回数情報の一元的な把握

日本国内の複数のIR施設にそれぞれカジノ施設が設置されることを前提にすると、入場回数制限の実効性を確保するためには、複数のカジノ施設への入場回数を一元的に把握し、かつ、新たな入場の可否を判断できる仕組みが必要です。

他方で、事業者間でこの種の個人情報を共有する制度設計とすることは適当ではないため、カジノ管理委員会が顧客の入場回数を一元的に把握し、事業者からの照会に対応するという制度設計にならざるを得ません。

そこで、カジノ管理委員会は、顧客のカジノ施設への入場状況を把握し、事業者の照会に応じることとすべきです。

なお、依存防止の観点から、入場回数に関する顧客へのフィードバックを行い、自身の入場頻度を認識させることも考えられますが、個人情報保護の観点等を含め、要否・方法について引き続き検討を行うこととされました。

3 マイナンバーカードを活用した本人確認措置

附帯決議第9項は、入場規制の制度設計に当たって、個人番号カード(いわゆるマイナンバーカード)の活用を検討することを求めています。

マイナンバーカードは、 ①本人特定事項である氏名や住所、生年月日、顔写真が記載されていること(券面の顔写真と所持人の顔を照合し、同一性を確認することで、なりすましを防止することが可能。)、②公的機関が発行する書面で、国民が容易に入手できること、③特定の個人について一貫して最新の情報を確認することができること、から本人確認手段として優れています。

他方で、マイナンバーカードに記載されているマイナンバーそのものは、行政機関のみが利用可能であり、民間事業者は利用することができません。
しかし、この点、マイナンバーカードのICチップに格納されている電子証明書を用いた公的個人認証(JPKI)は、民間事業者も使用することができ、カジノ管理委員会と事業者とでこれを活用し、統一的に入場回数を把握することができます。

そこで、日本人及び国内居住の外国人については、マイナンバーカードの公的個人認証を活用して本人確認を行い、入場回数の把握・照会制度を設けるべきとされました。
なお、外国人旅行客等のマイナンバーカードを制度上取得できない者については、パスポート等の写真付きの公的書面で本人確認を行うことが適当です。上記1のとおり、外国人旅行客には入場回数制限が設けることは想定していません。

マイナンバーカードの普及率は、2017年5月15日現在で9.0%(*2)である。この普及率を踏まえると、IR事業者の事業性に大きく影響し、「マイナンバーカードを使用して入場管理を行うことは現実的ではないのではないか」との意見が多いです。

この点については、本人確認の代替手段として、運転免許証等の顔写真付身分証明書も認めるべきではないかとの意見もあります。
もっとも、マイナンバーカードの公的個人認証を用いて、本人確認を行うからこそ、カジノ管理委員会が、複数のIR施設間のカジノ施設の入場回数を一元的に名寄せして管理することができるのであり、運転免許証でこれを行うのは困難でしょう。

したがって、運転免許証等を用いた本人確認の代替手段を広く認めるのは困難ではないかと考えられます。
ただし、初回のカジノ施設への入場に限って運転免許証等の顔写真付身分証明書を容認し、2回目以降はマイナンバーカードが無ければ入場できないという方法はあるかもしれません。
この場合は、カジノ管理委員会による一元管理はできないので、IR事業者において、マイナンバーカードがない顧客について一度入場した顧客か否かを把握するシステムを構築しなければならなくなります。

筆者のアイディアではありますが、カジノ施設の外に、全国の市区町村の出張所を設置し、そこで、通知カードがあればマイナンバーカードをすぐに発行することができるようにするのも一案ではないかと思われます。

IR施設の営業が開始するのが2025年前後であることに鑑みると、その前後までには今よりもマイナンバーカードの普及率は上がっているでしょう。
より抜本的に、競馬や競輪のような公営競技場への入場、遊戯であるパチンコ・パチスロ店への入場についても、依存防止策の一環として、マイナンバーカードによる本人確認を義務づければ、マイナンバーカードの普及率は格段に上がるものと考えられます(もちろん、これらの業界からの大反対は想定できます・・・)。

IR施設への宿泊者に対しては、カジノ施設への入場についてマイナンバーカードが必要となることについて周知徹底しておくことが必要でしょう。
そうでなければ、カジノ施設に行くことを目的として、折角、IR施設内のホテルに宿泊をしたのに行けなかったとの重苦情になってしまう可能性があります。

(*1)特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ(7月31日公表)
(*2)マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等の公表について(平成29年5月15日現在)


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員
(株)王将フードサービス 社外取締役(2014年6月~)
日特建設株式会社     社外取締役(2016年6月~)
政府IR推進会議     委員   (2017年4月~)

(主要関連論稿)
『カジノ法(IR推進法)の国会における主要争点(上)』(NBL1091号(2017年2月1日号)
『カジノ法(IR推進法)の国会における主要争点(下)』(NBL1091号(2017年3月1日号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。

カジノIRジャパン


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