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IRゲーミング法制度 第45回「IR推進会議取りまとめ」ポイント~カジノ収益連動の賃料・報酬

2017-08-30

【IR資料室】

筆者:弁護士 渡邉 雅之(略歴は巻末を参照)

本連載では、2017年7月31日に公表された『特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ』(*1、以下「本取りまとめ」) のうち、事業者や地方公共団体の関心の高い論点について解説するものです。
筆者は、同委員会の委員ではありますが、本稿における意見は筆者の私見に留まるものであり、同委員会全体及び特定複合観光施設区域整備推進本部の見解ではないことに留意してください。
第4回目では、事業者の関心が高い論点の一つである「カジノ収益(GGR)連動の賃料・報酬」について解説いたします。

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1 カジノ収益(GGR)連動の賃料・報酬にはどのようなものがあるか?

米国各州のカジノにおいては、カジノ収益(Gross Gaming Revenue – GGR)に連動して賃料や報酬が支払われる場合があります。

具体的には、①上下分離スキームにおける収益連動賃料(下記2)、②ゲーミング関連機器のレベニュー・パーティシペーション(下記3)、③親会社等へのアドバイザリーフィー(下記4)です。

2 上下分離スキームにおける収益連動賃料

米国各州のカジノ規制では、カジノ事業者が施設や土地を賃貸する場合(このような場合を上下分離といいます。)において、施設供用事業者や土地所有者がカジノ収益(GGR)に連動した賃料を得る場合は、これらの事業者もカジノライセンスの対象とされています。
他方、賃料がGGRに連動しない場合には、これらの事業者はライセンスの対象外とされています。

そこで、我が国のIRにおいても、施設供用事業者や土地所有者がGGRに連動しない賃料を受け取らないのであればカジノ免許の対象外となり、カジノ管理委員会の背面調査も受けないようになるのではないかとの議論が従前からありました。
言い方は悪いですが、背面調査や免許審査を潜脱するための議論です。これでは、反社会的勢力がカジノ免許なしに、GGRの一部を受け取っているのと実態として同じになってしまいます。

「本取りまとめ」では、上下分離のこのような問題点も考慮して、施設供用事業者については免許制と株主の認可制を、土地所有者については認可制を求めるべきとしています。

これは、米国の規制と異なり、施設供用事業者や土地所有者はライセンスの対象となっても、収益連動賃料を認めないものです。

「本取りまとめ」においては、「IR事業者が土地/施設の所有者等に支払う賃料については、これらの者は、直接IR事業を実施し公益に寄与する立場ではないことから、GGRに連動して賃料を算出することは認めるべきではなく、また、定額の賃料であっても、カジノ収益が通常の相場以上に部外に流出しないよう、契約の認可制の下で規制すべきである。」とされているところです。

これは、今回日本において初めて認められる民設民営のカジノは、IR事業を実施し、極めて公益性の高い諸条件(世界最高水準の規制)を満たすIR事業者にのみ認められる(刑法上の賭博罪の違法性阻却が認められる)ところ、直接IR事業を実施し公益に寄与する立場ではない、外部事業者が「GGRをストローのように外部に吸い上げる」のは妥当ではない、との考え方によるものです。

3 ゲーミング関連機器のレベニュー・パーティシペーション

米国各州のカジノ規制においては、カジノ事業者がスロットマシン等のゲーミング関連機器製造業者に対して、定額のリース料ではなく、GGRに連動したリース料を支払うことを認めているところが多いです。
これをレベニュー・パーティシペーション(Revenue Participation)といいます。

レベニュー・パーティシペーションは、ゲーミング関連機器製造業者にとっては、最先端の魅力のあるゲーミング関連機器をGGRによる報酬を得ることにより低コストで開発することができるというメリットがある。

また、カジノ事業者(特に資金面で脆弱なカジノ事業者)にとっても、事前に高額なリース料を支払わなくても、GGRに連動したリース料を支払うことにより、カジノ関連機器を利用できるというメリットがある。

しかしながら、上記2で説明したとおり、直接IR事業を実施し公益に寄与する立場ではない、外部事業者が「GGRをストローのように外部に吸い上げる」ことになるものであり、妥当とは言えません。

したがって、残念ながらレベニュー・パーティシペーションをIR開設時から認めることは困難であると考えられます。

もっとも、上記のとおり、レベニュー・パーティシペーションは、ゲーミング関連機器製造業者・カジノ事業者双方にとってメリットのある制度であるので、IRの導入後、将来的にはこれを認めることを検討すべきではないかと考えます。

米国においても、各州すべてにおいてレベニュー・パーティシペーションが認められているわけではなく、AGEM(Association of Gaming Equipment Manufacturers)などのロビーイングを通じて認められてきた歴史があります。

4 アドバイザリーフィー

海外の大手の外資系オペレーターは、子会社でカジノ事業を行う場合、当該子会社との間でマネジメント契約を締結し、GGRに連動したマネジメントフィー(アドバイザリーフィー)を得ている場合があります。

しかしながら、これも、直接IR事業を実施し公益に寄与する立場ではない、外部事業者が「GGRをストローのように外部に吸い上げる」ことになるものであり、妥当とは言えません。

したがって、GGR連動のアドバイザリーフィーも認められないと考えられます。

5 ではIR収益全体との連動では?

それでは、カジノ収益(GGR)連動ではなく、MICE事業、魅力発信事業、宿泊事業というIRの他の構成要素の収益全体との連動の報酬、賃料等を支払うことは認められるでしょうか?

「IR全体の収益連動」は、GGR連動ではないので認められ得る余地があります。

もっとも、MICE事業、魅力発信事業、宿泊事業といった事業部門は不採算部門となる可能性が高いことに鑑みると、事実上、カジノ収益連動と近くなる可能性があります。このように、「IR全体の収益」が、事実上「カジノ収益」に近い場合には、「IR全体の収益連動」の報酬、賃料、配当等は認められない可能性が高いと考えられます。

なお、上記2で紹介した「本取りまとめ」の記述のとおり、GGR連動でなくても、相場よりも高い賃料や報酬も認められないと考えられます。

(*1)特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ(7月31日公表)


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員
(株)王将フードサービス 社外取締役(2014年6月~)
日特建設株式会社     社外取締役(2016年6月~)
政府IR推進会議     委員   (2017年4月~)

(主要関連論稿)
『カジノ法(IR推進法)の国会における主要争点(上)』(NBL1091号(2017年2月1日号)
『カジノ法(IR推進法)の国会における主要争点(下)』(NBL1091号(2017年3月1日号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。

カジノIRジャパン


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