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IRゲーミング法制度 第47回「IR推進会議取りまとめ」ポイント~事業者選定先行の影響

2017-09-07

【IR資料室】

筆者:弁護士 渡邉 雅之(略歴は巻末を参照)

本連載では、2017年7月31日に公表された『特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ』(*1、以下「本取りまとめ」) のうち、事業者や地方公共団体の関心の高い論点について解説するものです。
筆者は、同委員会の委員ではありますが、本稿における意見は筆者の私見に留まるものであり、同委員会全体及び特定複合観光施設区域整備推進本部の見解ではないことに留意してください。
第6回目では、選定プロセスについて事業者選定が区域選定に先行する場合の影響について検討いたします。

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1 「本取りまとめ」の考え方(事業者選定先行)

IR区域認定手続等には、都道府県等が事業者を選定する手続と国が区域認定をする手続があります。推進法においては事業者選定と区域認定の先後関係について規定されていません。

この点、推進会議においては、以下のとおり、それぞれの手続きの長所・短所を検討した上で、IR事業が総体として公益性を有するかについて、国が公正かつ客観的に審査を行う必要があることや、申請を行う都道府県等において具体的な事業計画に基づく地元の合意を得る必要があることを踏まえて、都道府県等による事業者選定を先行することが妥当であるとされました。

この手続きでは、都道府県等は、まずIR事業者を公募・選定した上で、区域、IR事業者からの提案に基づいた事業基本計画に加え、懸念事項への対応、周辺インフラの整備や周辺環境対策等の都道府県等の施策を含む具体的な「区域整備計画」をIR事業者と共同で作成し、国に申請を行い、国は当該区域整備計画に係る区域を認定することとなります。
(なお、申請段階では、SPC等の事業者が特定されていることが必要です。)

特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律では、「カジノ施設において行われるゲームの公正性の確保のために必要な基準に関する事項」について政府は必要な措置を講ずることとされています(同法10条1項1号)。

また、附帯決議では「政府は、・・・法制上の措置を講じるに当たり、・・・射幸性の程度・・・副次的弊害の防止等の観点から、刑法の賭博に関する法制との整合性が図られるよう十分な検討を行うこと」(第2項)、「・・・各種規制等の検討に当たっては、諸外国におけるカジノ規制の現状等を十分踏まえるとともに、犯罪防止・治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないよう、世界最高水準の厳格なカジノ営業規制を構築すること」(第11項)とされています。

事業者選定を先行実施 区域認定を先行実施
手続き ・地方公共団体は、事業者の選定の後、その提案に基づいた具体的な事業計画を作成した上で国に申請を行い、国は当該事業計画等に基づき区域を認定する ・地方公共団体は、具体的な事業計画が無いまま国に申請を行い、国が区域を認定した後、地方公共団体が事業者を選定する
メリット ・国は、具体的な事業計画に基づき、事業内容の法目的との整合性や経済効果、事業継続性、懸念事項への対応等について公正かつ客観的な審査を行うことにより、当該事業の公益性の確保が可能となる
・地方公共団体は、具体的な事業計画に基づく地域住民への説明を行うことにより、地元合意に向けて説得力のある取組みが可能となる
・事業者は、事業の実施が確実な認定された区域について、地方公共団体に事業計画を提案し、具体的な投資判断を行うことができる
デメリット ・事業者は、区域認定がされておらず、事業の実施が不確実な段階で、事業計画を作成し、具体的な投資判断を迫られることとなる ・国は、具体性、実行確実性のない計画に基づき審査を行わなければならず、当該事業が真に公益性を有するのか、公正かつ客観的な判断ができない
・地方公共団体は、計画に具体性がないことから地域住民に説得力を持った説明ができず、合意形成が困難となる可能性がある

 

2 実務上の影響

(1)事業者の廉潔性の審査

推進会議では、事業者選定の先行について、区域とIR事業者をセットで認定すると、国が事業者にお墨付きを与えたように見え、また、事業者は廉潔性等に問題がある可能性もあるため、米国マサチューセッツ州のように、RFQ(Request for Qualification)を行い、廉潔性等について一応の確認をした上で、区域と事業者を認定すべきではないかとの意見もありました。

しかしながら、筆者としては、国が事前に10~20の事業者を審査しなければならないことになるところ、カジノ管理委員会の当初のキャパシティでは米国マサチューセッツ州のようにRFQを行うのは困難ではないかと考えます。

そこで、代替案として、国が地方公共団体を認定する段階で事業者に対し予備審査を行うべきではないかと考えます。国が定める基本方針やガイドラインにおいて、IR事業者選定の段階で、都道府県等に事業者の審査を一定程度行うプロセスを踏ませることも考えられます。

もっとも、都道府県等に廉潔性の審査を求めるのは事実上困難であるので、例えば、申請をする事業者に自らの費用で自主的な背面調査を行わせ、その結果の報告書を都道府県等に提出させて、それを都道府県等において審査をさせるという方法が現実的かもしれません。
いずれにせよ、基本方針等の国の指針において、都道府県等における事業者の廉潔性の審査について規定されることが望ましいと考えます。

(2)国による区域認定の申請のタイミング

国による区域認定申請受付は、都道府県等による事業者選定に必要となる合理的な時間的余裕を考慮して、公正、公平なタイミングで開始する必要がある。筆者としては、2020年~2021年ぐらいのタイミングで国による区域認定が行われるのが妥当と考えます。

なお、事業者選定を先行する場合には、同一の事業者が複数の都道府県等の事業者選定手続に対して申請をすることができるかが問題となりますが、実施法案上は特段の制限は設けられないものと考えられます。
実施法案は、同一の事業者が複数の都道府県等のIR事業者となることについても特段制限を設けるものではないものと考えられます(但し、独占禁止法上の独占の問題は別途検討する必要があります)。

もっとも、都道府県等の中には自己の手続に申請した事業者は他の都道府県等において申請することは認めないとの条件を実施方針に定めるところも出てくる可能性があります。
この場合でも、当該条件は当該都道府県等の事業者選定手続において落選した事業者が、その後に実施される他の都道府県等における事業者選定手続に申請することまで制限することは当然できないでしょう。

(*1)特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ(7月31日公表)


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員
(株)王将フードサービス 社外取締役(2014年6月~)
日特建設株式会社     社外取締役(2016年6月~)
政府IR推進会議     委員   (2017年4月~)

(主要関連論稿)
『カジノ法(IR推進法)の国会における主要争点(上)』(NBL1091号(2017年2月1日号)
『カジノ法(IR推進法)の国会における主要争点(下)』(NBL1091号(2017年3月1日号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。

カジノIRジャパン


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