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IRゲーミング法制度 第48回「IR推進会議取りまとめ」~区域申請主体。一部事務組合は?

2017-09-13

【IR資料室】

筆者:弁護士 渡邉 雅之(略歴は巻末を参照)

本連載では、2017年7月31日に公表された『特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ』(*1、以下「本取りまとめ」) のうち、事業者や地方公共団体の関心の高い論点について解説するものです。
筆者は、同委員会の委員ではありますが、本稿における意見は筆者の私見に留まるものであり、同委員会全体及び特定複合観光施設区域整備推進本部の見解ではないことに留意してください。
第7回目では、区域認定の申請主体・認定都道府県等として一部事務組合は可能かについて検討いたします。

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1 一部事務組合とは

「一部事務組合」とは、普通地方公共団体(都道府県、市町村)がその事務の一部を共同して処理するために設ける「特別地方公共団体」です(地方自治法284条2項)。
一部事務組合が成立すると、共同処理するとされた事務は、関係地方公共団体の権能から除外され、一部事務組合に引き継がれます(同条3項)。

都道府県が加入する一部事業組合は総務大臣、その他のものは都道府県知事の許可を得て設ける特別地方公共団体です(同条3項)。規定上は、異なる都道府県(例えば、X県およびY県)が共同で一部事務組合を設立することも可能です。

隣接する中小規模の市町村が、消防・ゴミ処理・火葬場等の運営を行なうために設けることが多く、小規模な町村や自治体を超えて近接する地区で一部事務組合によって、小・中学校・高等学校・大学を運営する事例もあります。公営競技(地方競馬・競輪・競艇)を主催するための団体、港湾管理者として設置している団体もあります。

公営競技についてみると、川崎競馬は、神奈川県と川崎市が構成する一部事務組合「神奈川県川崎競馬組合」が主催しています。船橋競馬は、千葉県、船橋市、習志野市で構成する一部事務組合「千葉県競馬組合」が主催しています。

「名古屋競輪組合」は、愛知県と名古屋市が組織する一部事務組合です。名古屋県競輪組合規約によれば、利益金は愛知県と名古屋市で折半することとされています。
「東京都六市競艇事業組合」は、八王子市、武蔵野市、昭島市、調布市、町田市および小金井市で組織される一部事務組合です。

2 「本取りまとめ」の考え方

「本取りまとめ」においては、区域認定の申請主体として、下記(1)のとおり、都道府県または政令指定都市(以下併せて「都道府県等」といいます。)とされていますが、区域認定の申請主体としての都道府県等が、IR区域の立地市町村または周辺自治体との間で、一部事務組合を組成できるか問題となります。

一部事務組合に関して本取りまとめには記載はありませんが、以下、これに関連する記載について説明いたします。

(1)区域認定の申請主体

IR区域の整備に当たり、申請主体には、インフラや周辺環境の整備等の広域的な施策及び依存防止対策等について総合的な役割を果たすことが求められます。このため、申請主体は広域的・総合的な役割を担いうる都道府県を基本とすべきとされています。
この場合、申請に当たって、政令指定都市を含む立地市町村・特別区と協議等を行うこととすべきとされています。

また、基本的に都道府県と同等の権能を有する政令指定都市についても申請主体に含めるべきとされています。この場合、広域施策等における行政運営上の調整を図る必要があることから、申請に当たって都道府県と協議等を行うこととすべきとされています。

(2)区域整備計画を作成する際の立地市町村等への協議等

「都道府県が区域整備計画を作成する場合」には、広域的な観光施策の推進や弊害防止対策について、十分な効果が得られる内容を盛り込む観点から、①政令指定都市を含む立地市町村・特別区に協議等を行うとともに、②公聴会等住民の意見を反映するための措置を設けるほか、周辺自治体等の関係機関等を構成員とする協議会も都道府県の判断で設置を可能とし、③区域整備計画作成主体である都道府県の議会の議決を得る(協議先の立地市町村・特別区においては議会の議決は任意)、といったことを行った上で、国に認定申請を行うこととすべきとされています。

「政令指定都市が区域整備計画を作成する場合」には、基本的に上記①~③と同様に取り扱うこととしますが、上記①の関係では、都道府県に協議等をし、また、上記③の関係では、政令指定都市の議会の議決を得ることとすべきとされています。

(3)認定都道府県等によるIR事業者の監督

主務大臣は、①都道府県等及びIR事業者が区域整備計画を適切に実施しているかを監督するとともに、②国際的・全国的な見地等から必要があると認めるときに都道府県等及びIR事業者を監督することとすべきとされています。

都道府県等は、IR事業者を選定し、区域整備計画を作成するとともに、IR事業者と共同で事業を実施する立場から、区域整備計画に定めるIR事業を着実に実行するため、IR事業者を監督することとすべきであるとされています。

なお、「共同で事業を実施する」とは、区域整備計画におけるそれぞれの役割、事業内容に関するIR事業者と都道府県等の合意に基づき、IR事業者がIR事業を実施するとともに、都道府県等は区域整備に係るインフラ整備、IR推進のための国際観光・弊害防止対策等を実施することを意味します。

都道府県等とIR事業者においては、区域整備計画に加え、事業実施に当たって実施協定を締結することとすべきこととされています。また、実施協定の締結に当たっては、主務大臣が認可を行うこととすべきとされています。

加えて、都道府県等は、IR事業者に対し、実施協定の着実な履行を求めるとともに、区域整備計画の着実な実行のため必要がある場合には、IR事業者に対し、事業計画の協議・承認、報告徴収、実地調査、指示等を行えることとすべきであるとされています。

(4)納付金に関する立地市町村や周辺自治体への配慮

推進法の附帯決議第15項においては、納付金を徴収する場合の制度設計に当たり、「周辺地方公共団体等に十分配慮した検討を行うこと」とされています。

「本取りまとめ」では、これを踏まえ、徴収された納付金や入場料を国から交付される認定都道府県等から、納付金の一部を立地市町村や周辺自治体等に交付できることとすべきであるとされています。
また、交付内容や方法については、認定都道府県等が作成する区域整備計画に記載することとすべきであるとされています。

3 一部事務組合の可否についての検討

上記2(1)の考え方によれば、一つの都道府県と当該都道府県内の政令指定都市がIR区域認定の申請主体となることを求めている場合には、当該都道府県と当該政令指定都市が協議の上、いずれが申請主体となるかを決定した上で申請をする必要があると考えられます。

この点、都道府県と立地市町村が一部事務組合を設立して申請主体となることができないかが問題となりますが、上記2(3)のとおり、認定都道府県等は国(国土交通大臣)による監督を受けること、及び、認定都道府県等としてIR事業者に対する監督の主体になることに鑑みると、一元的な主体でないと責任の所在が明確化しないことから、両者が地方自治法上の一部事務組合を設立して申請をすることは認められないものと考えられます。

これは、立地市町村が政令指定都市である場合も同様です。すなわち、都道府県と同都道府県内の政令指定都市が協議の上、都道府県が申請主体となった場合には、立地市町村である政令指定都市は一部事務組合を組成することもできなくなると考えられます。
もちろん、この場合、立地市町村である政令指定都市が申請主体である都道府県に担当職員を出向させることは可能です。

周辺自治体も、上記2(2)のとおり、申請主体である都道府県等から協議を受ける可能性があり、また、上記2(4)のとおり、納付金の一部を受領する可能性はありますが、立地市町村の場合と同様に、認定都道府県等との間で一部事務組合を組成して認定都道府県等となることはできないものと考えます。

以上のとおり、実施法案上は、区域認定の申請主体、監督の主体・客体である認定都道府県等について、一部事務組合を組成することはできないものと考えられます。

(*1)特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ(7月31日公表)


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員
(株)王将フードサービス 社外取締役(2014年6月~)
日特建設株式会社     社外取締役(2016年6月~)
政府IR推進会議     委員   (2017年4月~)

(主要関連論稿)
『カジノ法(IR推進法)の国会における主要争点(上)』(NBL1091号(2017年2月1日号)
『カジノ法(IR推進法)の国会における主要争点(下)』(NBL1091号(2017年3月1日号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。

カジノIRジャパン


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