【国内ニュース】
10月11日、大阪市内にて「夢洲IR&万博が未来を拓く産学官共創シンポジウム」が開催された。主催は、株式会社健康都市デザイン研究所。
登壇者は、福島伸一氏(大阪国際会議場代表取締役社長、関西経済同友会万博&MICE・IR推進委員会委員長、大阪観光局会長)、溝畑宏氏(大阪観光局理事長、大阪府・大阪市IR推進会議座長)、谷岡一郎氏(大阪商業大学 学長)など。
第三部では海外IR事業者のプレゼンテーション枠があった。登壇企業は、シーザーズ・エンターテイメント、MGMリゾーツ、メルコリゾート&エンターテインメントの3社。
大阪市IRへの参入意欲、地元企業との協業などをアピールした。
衆院解散の決定前には、秋の臨時国会におけるIR実施法案の成立が期待されていた。ゆえに、IR実施法案の審議が見込まれていた、このタイミングで、多くのIR関連イベント、海外IR事業者の関係者の来日が相次いだ。
大阪市は、日本の大都市圏において唯一、行政がIR誘致方針を明確とし、その手続きを進めるエリア。日本の大都市圏、大阪市のIRは、シンガポールのIR以上の経済条件を備える。
それだけに、大阪市には、多数の海外IR事業者が殺到し、メディアPRを競う展開となる。
主な背景は以下の3点。
1)日本のIRは、制度設計上、大きな利益・キャッシュフローが確実視される
2)日本は、世界の一定以上の経済規模を持つ国で、ブラジルとともに残された、最後のカジノIR未開拓市場
3)マカオにおけるゲーミング・コンセッションが2020年、2022年に満期を迎える
日本では、IRの設置数は、IR議連の考え方およびIR推進法の国会答弁から、当初は数ヵ所、将来は10ヵ所以下と考えられる。
IR議連は「全国に10ヵ所ほど、道州制における広域ブロックに一つずつほど」の考え方を共有。
日本は世界第三位の経済大国であり、そこに、少数のIR施設を設置すれば、各IRの利益・キュッシュフローは必然的に大きなものとなる。また、各IRは、各ブロックの経済力を寡占できる。
これらは、同様の制度設計を持つ、アジア太平洋地域の国々の例を見ても明らか。
もう一つのポイントは、マカオにおけるゲーミング・コンセッションの満期の到来。コンセッション保有6社は、それぞれマカオ事業を喪失するリスクを抱える。その経営リスクをオフセットする意味でも、日本参入は重要となる。
中国系3社は、言うまでもなく、マカオを主力とする。米国系3社は、米国とマカオに展開するが(ラスベガス・サンズ社のみシンガポールに拠点を有する)、米国事業の収益性は低い。
マカオでは、6事業者(中国系3社、米国系3社)がゲーミング・コンセッション(サブ・コンセッションを含む)を所有しており、それらは2020-2022年に満期を迎える。
また、マカオ政府は2017年より、コンセッションを早期償還できる権利を得る(政府は早期償還権を行使する場合、1年以上前にノーティスする必要がある)。
仮に、コンセッションが維持されない場合、事業者は、営業権を失い、さらに、すべての設備を対価なしに、マカオ政府に移管することが義務付けられている。
各社にとり、コンセッションの喪失は、事実上、マカオ事業すべての喪失を意味する。
現在、マカオ政府は、満期後の対応について、検討を進めている。
2017年5~7月にかけて、政府高官がコンセッション満期について相次いで発言。ポイントは、
・政府は、すべての実行可能な方向性を検討
・コンセッション満期は、最大5年間の延長が可能
・満期後は、新規コンセッション付与プロセスが必要であり、”新たな入札”も選択肢
このうち、”新たな入札”発言は、6事業者に激震を与えた。
それまで、政府関係者は、”更新(Renewal)”と表現し、6事業者はそこに満期後も現状維持のニュアンスを感じ取っていた。
しかし、政府が”新たな入札”と表現したことで、事業者再募集・選定、入れ替えのニュアンスを読み取ったわけだ。
図表:マカオ カジノ運営6事業者のコンセッション満期日
コンセッション満期日 | 事業者 | 証券取引所 | カジノ施設数 | 獲得順 |
---|---|---|---|---|
2020年3月31日 | SJM Holdings | 香港証券取引所 | 21 | 1 |
2020年3月31日 | MGM China | 香港証券取引所 | 1 | 5(サブ) |
2022年6月26日 | Wynn Macau | 香港証券取引所 | 2 | 2 |
2022年6月26日 | Galaxy Entertainment | 香港証券取引所 | 6 | 3 |
2022年6月26日 | Sands China | 香港証券取引所 | 5 | 4(サブ) |
2022年6月26日 | Melco Resorts & Entertainment | NASDAQ | 4 | 6(サブ) |
注1:カジノ施設数は2017年3月末時点
注2:(サブ)はサブコンセッション。Sands ChinaはGalaxy Entertainmentより、MGM ChinaはSJM Holdingsより、Melco Resorts & EntertainmentはWynn Macauより取得
日本のIR制度、そして、グローバルスタンダードの観点から、IRコンソーシアムは、地域企業、開発企業、海外オペレーターで形成することが必然である。
地域企業の役割は、「地域社会の信頼・合意形成力」「地域社会の調整」「地域に最適なコンセプトの決定」。
開発企業の役割は、「日本における不動産開発の経験ノウハウ」「資金調達のバックアップ」
海外オペレーターの役割は、「海外におけるカジノIRの経験ノウハウ」「資金調達のバックアップ」
上記の3つがそれぞれ不可欠な能力である。
日本企業、地域企業がIR経営主体の中核となる必然性
1-1)IRは大きな権益事業。政府は、少数限定のIRのみ許可する方向。IR経営主体は、一定の商圏を寡占し、大きな利益が確実視される。公共政策性に加え、国内への利益還流、産業育成の視点が重要
1-2)事実、日本と同様に、政府がIR施設を少数に制限するアジア・パシフィック主要国では、自国企業がほとんどのIRを開発運営する。都市国家であるシンガポールはほぼ唯一の例外
1-3)IRは、観光及び地域経済の振興を政策目的とする、街づくり事業である。街に精通した日本企業、地域企業が事業化をリードすべき
1-4)IR経営主体には、地域社会からの信頼が求められる。地域社会の信頼を積み上げてきた、日本企業、地域企業こそIR事業化をリードすべき
1-5)海外IR企業は、日本における事業経験、不動産開発経験、地域社会の信頼を持たない
日本企業、地域企業はIR経営主体をリードする能力を有する
2-1)地域企業は、当該地域、街について高い知識を有する
2-2)日本企業は、観光レジャー施設の高い開発運営能力を有する
2-3)日本企業は、カジノの開発運営の経験を持たない。しかし、カジノの開発運営ノウハウはコモディティ(標準化・流動化)。世界の約130ヵ国に2,000ヵ所ほど存在。そのノウハウは、資本構成によらず、人・チーム・各種サービス会社を通じて調達可能
2-4)日本企業、地域企業は、海外IR企業をパートナーとして活用可能。日本参入意欲を持つ海外IR企業は多数
2-5)IR事業化において、現在の資金力は重要なポイントではない。IR制度上、事業者選定、区域選定が終了するまで、大きな資金は不要。選定されれば、その事実を以って金融市場から資金調達が可能
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