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IRゲーミング法制度 第49回「IR推進会議取りまとめ」~IR事業者の株主規制

2017-10-24

【IR資料室】

筆者:弁護士 渡邉 雅之(略歴は巻末を参照)

本連載では、2017年7月31日に公表された『特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ』(*1、以下「本取りまとめ」) のうち、事業者や地方公共団体の関心の高い論点について解説するものです。
筆者は、同委員会の委員ではありますが、本稿における意見は筆者の私見に留まるものであり、同委員会全体及び特定複合観光施設区域整備推進本部の見解ではないことに留意してください。
第8回目では、IR事業者の株主規制について説明いたします。

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1 「本取りまとめ」の考え方

「本取りまとめ」は、参入規制の原則の一つとして、『カジノ事業免許に係るIR事業者の株主等については、認可制等の下で、反社会的勢力の排除等その廉潔性を確保すべきである』としています。

この原則は、カジノ事業免許を受けるIR事業者の株主等は、IR事業者とは別の主体ですが、株主権等の行使によりカジノ事業に重大な影響力を有するほか、カジノ収益を含むIR事業収益の一部を受け取る者であるため、IR事業者と同水準の高い廉潔性を求めるべきとの考え方によります。

認可の対象とする株主等は、カジノ事業に対する影響力の程度等を勘案の上、議決権、株式又は持分の保有割合が直接又は間接を問わず5%以上の株主等とすべきとしています。また、保有割合が5%未満の株主等についても報告を徴求し、必要に応じて、その廉潔性を調査し、不適格者への対応をできることとすべきであるとしています。

これは、シンガポールにおいては「議決権」の「5%以上」を保有する者を認可の対象とし、米国ネバダ州においては「議決権」の「5%超」を保有する者(公開会社の場合。機関投資家を除く。)を届出の対象としていることや、我が国の銀行法において銀行の5%超の議決権保有者を届出の対象としていること等を参考にしたものです。

「議決権保有割合」が5%以上の株主のみならず、「株式又は持分の保有割合」も5%以上の株主も対象としているのは、IR事業者(カジノ事業者)の株主規制においては、IR事業者に対してどれだけ支配力を有しているか(議決権)だけではなく、カジノ収益を直接・間接にどの程度得ているか(持分割合)という点も勘案したものと考えられます。

すなわち、反社会的勢力等にカジノ由来の収益が流れることを防止する観点から、議決権のみをベースにするのではなく、株式又は持分の5%以上を有する場合も認可の対象にすることとされているのです。

したがって、認可を受けたくないからといって無議決権株式を保有する場合にも、総発行株式の5%以上の割合を所有する場合には、認可の対象となり得ます。この点、株式発行割合が5%未満の黄金株(拒否権付種類株)を保有する場合は認可の対象となるか問題となりますが、拒否権は実質的に議決権に近いものであり、なおかつ、実質的に100%の決定権を持っているのに等しいことからすれば、認可の対象となると考えるべきでしょう。

また、株式を「直接」保有している者だけでなく、「間接」保有している者についても対象とすべきとされていますが、これも、米国ネバダ州やシンガポールの規制と同じ考え方です。
実質的にIR事業者を支配する者やカジノ収益(GGR)を享受する者を捕捉しようとするものです。

「本取りまとめ」の考え方においては、米国ネバダ州のカジノ事業者に対する株主規制のように、「公開会社か非公開会社」か「機関投資家か否か」によって適用される基準が異なることはありません。

株主については、IR事業者に適用される許認可は、「免許制」ではなく「認可制」ですが、「認可制」であるからといって必ずしもカジノ管理委員会の背面調査や審査のレベルが緩やかになるわけではありません。

なお、「本取りまとめ」には記載はありませんが、国や地方公共団体等の公の主体が、IR事業者の株式を所有する場合には認可の対象外となると考えられます。銀行法の銀行議決権大量保有者制度(議決権5%超)・銀行主要株主規制(議決権20%以上)でもこれらの者は、その信用性の高さから、報告・認可の対象外とされています。

2 間接株主・共同保有者の認可の基準についての私案

上記1のとおり、「本取りまとめ」においては、間接株主も認可の対象とすることとされていますが、どのような基準で認可の対象とするのか基準は示されていません。
おそらく、実施法や政令・カジノ委員会規則の中で示されることになると考えられますが、筆者としては以下のような基準を採用すべきと考えています。

以下の①又は②のいずれかの基準において、IR事業者(カジノ事業者)の議決権又は株式を5%以上保有しているものとみなされる場合には、認可を必要とする。

①自己が被保有法人の議決権や株式保有割合において過半数(50%超)の保有をしている場合には、被保有者である法人が保有している議決権や株式を保有しているものとみなす。(議決権過半数基準)

②自己が被保有法人に対して保有している議決権保有割合(又は株式保有割合)と、被保有会社が対象会社に対して有している議決権保有割合(又は株式保有割合)を掛け算で乗じて、保有割合を考える。(掛け算基準)

 
上記の「議決権過半数基準」は、我が国の銀行法の主要株主規制等において取られている考え方です。この考え方は、カジノ事業者に対してどれだけ支配力を有しているかを考えるものです。すなわち、我が国の会社法では、株式会社において、過半数の議決権を保有していれば、取締役の選解任をすることができ、会社の意思決定を支配することができることによります。

他方、上記の「掛け算基準」は、ネバダ州を初めとする諸外国の株主規制の考え方です。この考え方は、カジノ収益を直接・間接にどの程度得ているかを考えるものです。

上記1のとおり、本取りまとめの株主規制の考え方は、「カジノ事業者に対してどれだけ支配力を有しているか」と「カジノ収益を直接・間接にどの程度得ているか」のいずれも考慮しているので、両方の基準を併用すべきと考えます。

「議決権過半数基準」と「掛け算基準」のいずれが厳しいかはケースバイケースで異なります。

まず、下記の【ケース1】においては、「議決権過半数基準」では、BはAの議決権を過半数(51%)保有しているので、X社(カジノ事業者)の議決権を5%保有しているものとみなされ、Bはカジノ管理委員会の認可を取得する必要があります。

他方、「掛け算基準」では、BはX社の議決権を約2.5%(≒0.5×0.51)保有しているものとみなされ、Bはカジノ管理委員会の認可を取得する必要はないことになります。

次に、下記の【ケース2】においては、「議決権過半数基準」では、DはC社の議決権を過半数(51%)保有していないので、Y社(カジノ事業者)の議決権を保有しているものとはみなされず、Dはカジノ管理委員会の認可を取得する必要はありません。

他方、「掛け算基準」では、DはY社の議決権を5%(≒0.25×0.2)保有しているものとみなされ、Dはカジノ管理委員会の認可を取得する必要があります。

なお、「議決権過半数基準」、「掛け算基準」のいずれによっても、株主が複数層に及ぶ場合には基準が及ぶ限り、認可の対象とすべきです。

例えば、下記の【ケース3】では、「議決権過半数基準」、「掛け算基準」のいずれによっても、間接株主であるF社、Gのいずれもカジノ事業者であるZ社の議決権25%を保有しているものとみなされ、いずれもカジノ管理委員会の認可の対象となると考えられます。

「本取りまとめ」にはありませんが、銀行法の銀行主要株主規制や銀行議決権大量保有報告書制度、金融商品取引法の大量保有報告書制度を参考として、共同保有者制度(【ケース4】参照)やみなし共同保有制度(【ケース5】参照)も導入すべきと考えます。

「共同保有制度」とは、下記の【ケース4】のような場合において、A・BはいずれもX社(カジノ事業者)の議決権の2.5%しか保有していませんが、議決権行使について同意している場合や、株式の取得又は譲渡について共同して行う場合には、他方の当事者が保有している議決権や株式を保有しているものとみなして、その結果5%以上保有しているので、認可の対象とするという制度です。

「みなし共同保有制度」とは、【ケース4】のように両当事者に意思の連絡がない場合であっても、【ケース5】のように、資本関係から同一の議決権行使をすることが当然の場合には、両者の株式保有割合が合算されるというルールです。
下記のケースでは、C社・D社(それからE社または個人であるE)はいずれも5%保有していることになり、カジノ管理委員会の認可の対象となります。

3 議決権・株式を保有していない兄弟会社は認可・背面調査の対象となり得るか?

株主規制は、上記2の【ケース1】から【ケース3】において説明したとおり、間接的に議決権又は株式を保有する法人・個人も対象にすべきと考えますが、間接規制の基準は原則として、「下⇒上」(例えば親会社や持株会社)への判断のみでなさるべきであり、「下⇒上⇒下」(例えば親会社・持株会社の他の子会社)の判断はなされるべきではないものと考えられます。

すなわち、上記2【ケース5】のみなし共同保有においては、資本関係により、C社・D社は認可の対象となるとする規制を設けるべきであると考えますが、下記の【ケース6】におけるB社のようにカジノ事業者(X社)に対して全く議決権や株式を保有しない法人は、株主規制において認可や背面調査の対象にはならないものと考えられます。

もっとも、【ケース6】において、たとえば、B社が、親会社であるC社に関する意思決定も実態的に行っているような場合で、A社の株主権を実態的に行使できるといった場合には、たとえB社は認可の対象とならなかったとしても、カジノ管理委員会はその調査権限においてC社の関係者としてB社やその役員の背面調査を行うことになると考えられます。
 ここでは、カジノ管理委員会は、株主の認可や背面調査を逃れるようなスキームの組成が行われていないかの調査を行うことになるでしょう。

4 法人でない団体が株主である場合

カジノ事業者(IR事業者)の株式を民法上の任意組合、投資事業組合有限責任組合、海外のLimited Partnershipのような法人でない団体が所有するケースもあり得ます。

このような団体についても当然ながら、株主規制の対象とすべきです。

この点、銀行法の銀行大量保有報告制度、銀行主要株主規制においても、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるもの」(銀行法3条の2第1項1号、同法施行規則1条の4)は規制対象となっており、上記の例に挙げた法人でない団体が規制対象となっております。

なお、これらの団体については、複数の組合員がいますがこれらの組合員についても規制の対象とすべきです。

その際には、業務執行権(議決権)を有する組合員(投資事業有限責任組合の無限責任組合員や海外のLimited PartnershipのGeneral Partnerなど)については、業務執行権の割合に応じて、上記2で説明をした「議決権過半数基準」と「掛け算基準」を適用すべきと考えます。

他方、業務執行権(議決権)を有しない組合員(投資事業有限責任組合の有限責任組合員や海外のLimited PartnershipのLimited Partnerなど)については、その有する持分(出資割合)に応じて「掛け算基準」を適用すべきと考えます。業務執行権はなくてもカジノ収益を得る立場である以上、規制対象外とすべきではありません。

下記の【ケース7】においては、A投資事業有限責任組合は、25%の議決権・株式を保有するものとして認可の対象となります。

B社(A投資事業有限責任組合の無限責任組合員)は、「議決権過半数基準」では25%保有するものとして、議決権の「掛け算基準」では25%(=25%×100%)保有するものとして、出資割合の「掛け算基準」では5%(=25%×20%)保有するものとして、認可の対象となります。

C(個人)も同様に、「議決権過半数基準」では25%保有するものとして、出資割合の「掛け算基準」では25%(=25%×100%×100%)保有するものとして、出資割合の「掛け算基準」では5%(=25%×20%×100%)保有するものとして、認可の対象となります。

D社(A投資事業有限責任組合の有限責任組合員)は、「議決権過半数基準」では0%保有するものとして、議決権の「掛け算基準」では0%(=25%×0%)保有するものとして、認可の対象となりませんが、出資割合の「掛け算基準」では20%(=25%×80%)保有するものとして認可の対象となります。

E(個人)も同様に、「議決権過半数基準」では0%保有するものとして、議決権の「掛け算基準」では0%(=25%×0%×100%)保有するものとして、認可の対象となりませんが、出資割合の「掛け算基準」では20%(=25%×80%×100)保有するものとして認可の対象となります。

5 株主の役員に対する背面調査はどこまで行われるのか

背面調査においては、カジノ管理委員会は、全米各州共通のMulti Jurisdictional Personal History Disclosure Form(*2、カジノ事業免許の申請における共通確認事項)と同等の申請書様式を規定することが想定されています(*3)。
これは、免許対象となるIR事業者の役員だけでなく、認可対象となる株主の役員についても同じ申請書様式となると考えられます。

申請者本人に、上記様式に従い自己申告させるとともに、必要な書類等を添付させた上で、カジノ管理委員会自身が調査を実施します。カジノ管理委員会は、申請者本人(法人を含む。)から背面調査に係る包括的な同意を得て、関係行政機関への照会を実施する等、綿密な裏付調査を実施します。

調査対象については、例えば、法人の役員本人だけでなく、その配偶者、被扶養者等の親族、仕事上密接な関係を有する者等、カジノ管理委員会が調査に必要と考える者は、全て対象となります。調査事項については、犯罪歴や暴力団との関係、刑事・民事訴訟の内容、雇用歴や学歴等の非財務事項及び資産情報、負債情報等の財務事項等を対象として、詳細に調査を実施します。

ここで、認可対象となる株主(法人)のどの範囲の役員が背面調査の対象となるかが問題となります。

Massachusetts Gaming Commissionが2017年4月22日に行ったパブリックコメント(A Request for Public Comment: Background investigation requirements for outside directors of casino licensees)における整理によれば、米国においても、社内・社外を分けずに全ての取締役をライセンス・背面調査の対象とする州(ニュージャージー州、イリノイ州、インディアナ州、ミズリー州)もあれば、ミシガン州のように基本的に社内取締役のみライセンス・背面調査の対象とする州もあります。もっとも、ミズリー州においても、ケースバイケースではありますが社外取締役も背面調査の対象とされています。

社外取締役であっても、カジノ収益から報酬を得ることになることに鑑みると、日本のIR事業者(カジノ事業者)の認可対象となる株主についても、同様に社内取締役だけでなく、社外取締役も背面調査の対象になるものと考えられます。

さらに、日本の監査役設置会社の監査役は、監査委員をつとめる取締役と同様の役割を果たすこと、監査役であってもカジノ収益から報酬を受けていることに鑑みると監査役についても背面調査の対象になるものと考えられます。会社法上の取締役や監査役でなくても、カジノ事業管掌の執行役員等の役員も背面調査の対象となるものと考えられます。

もっとも、カジノ管理委員会の調査キャパシティを考えると、実際の運用においては、IR事業者(カジノ事業者)の役員の背面調査に比べた場合、背面調査の範囲(対象者・調査事項)は狭くなるものと考えられます。株主の調査は特に代表取締役等の代表者の背面調査が中心になってくるものと考えられます。

平成29年5月31日の推進会議に出席したコナミホールディングス株式会社坂本専務取締役からは、下記のような回答が行われました(*4)。コナミホールディングス株式会社は、米国ネバダ州、オーストラリア、シンガポール等でカジノライセンスを取得しています。

○コナミホールディングス株式会社坂本専務取締役

まず、親会社の調査ですけれども、取締役は全部調査を受けます。ただし、私が調査を受けるほどの書類を出させて、面接で公聴会までいくことはほとんどないと思います。ただし、一番トップの人は、株主であり役員の方は公聴会まで呼び出されますけれども、それ以外の人は行きません。
株主ですけれども、5%ルールということで、5%以上を持っている株主は、それが会社であれば、会社の役員と会社の大株主、そこにまた会社が入っていれば、その中の取締役と大株主、要するに、一個人に行くまでずっとさかのぼっていくと思います。そのときに、海外に所在していたり、色々ありますけれども、一個人の調査ができるまで徹底的に行くと思います。

 
すなわち、株主の役員としては、全ての取締役が背面調査の対象となるものの、書類の提出・公聴会への出席などカジノ事業者の役員と同等の調査は、株主の代表者についてのみ行われるということです。

なお、背面調査について社外取締役も対象となり得ることに鑑みると、弁護士等、職務上の守秘義務を負う者を社外取締役とすると背面調査の際に支障が出てくる可能性があることに留意が必要でしょう。

6 外資規制について

なお、「本とりまとめ」には記載されていませんが、IR事業者の株主保有については特段の外資規制は設けられていません。すなわち、外国のカジノオペレーターが、日本企業とのコンソーシアムを組成せずに、IR事業者の議決権の100%を保有することも許されます。

OECD資本自由化コード(3条)においても、外資規制は、①公の秩序の維持又は公衆の衛生、モラル及び安全保障のために必要な行動、②重大な安全保障上の利益の保護のために必要な行動、③国際の平和及び安全に関する義務の履行のために必要な行動、に限られることに鑑みると、IR事業者の株主に外資規制を設けるのは困難です。

もっとも、外資系オペレーターが100%株主の事業者が、都道府県等に事業者選定に申請した場合に、当該都道府県等によって選定されるかは別問題です(都道府県等は事業者選定の基準として、地元企業の参画などを入れてくるでしょう)。

7 複数のIR区域のIR事業者の株主となること

IR実施法が施行された場合、当初は、2~3か所のIR区域が全国に設けられ、IR区域の数だけ、IR事業者が選定されることになります(一IR区域・一IR施設・一IR事業者の原則)。

この場合、同一の法人が複数のIR区域のIR事業者の株主となることができるかが問題となります。

シンガポールのGaming Control Actの42条においては、Marina Bay SandsとResort World Sentosaの2つのいずれかのカジノ運営会社の主要株主(20%以上の議決権保有者)となる者は、シンガポールにカジノが2つしかない間は、他方のカジノ運営会社に出資することが禁止されています。

しかしながら、IR実施法案にはこのような制約は設けられることはないでしょう。すなわち、2つのIR事業者の100%株主が同一主体となることも禁止されることはないと考えられます。
もっとも、このような場合は独占禁止法上の問題が出てくる可能性があります。

ただし、一方のIR事業者に30%出資した法人が別のIR事業者に同様に30%出資するようなケースは現実的に出てくる可能性があります。

8 IR事業者が上場会社となった場合における反社会的勢力の排除について

実施法上、IR事業者が株式市場に上場することについては特段の制限が設けられることはないでしょう。当初非上場であっても、上場による利益を得るためにIR開設後に上場を目指す可能性は十分にあります。

IR事業者が上場会社となる場合には、暴力団員等の反社会的勢力が株主となることをどのように排除するのかを検討する必要があります。

すなわち、非上場会社の場合は、取締役会の承認がなければ、株式を譲渡できない関係で、IR事業者として新たな株主が反社会的勢力であるか否かを十分調査する機会があります。

これに対して、IR事業者が上場会社の場合は、証券会社に口座を設けている限り、誰でも株式を自由に取得することができ、IR事業者が新たな株主が反社会的勢力であるかを調査する機会はありません。

もちろん、証券会社は証券口座を設ける際に、口座開設申込人が反社会的勢力でないか反社チェックをしますが、そのチェックから漏れた反社会的勢力が株主となった場合にどう排除すればよいかということが問題となります。

上場市場においては、株式譲渡は自由ですので排除はかなり難しいですが、会社法上の取得条項付株式(会社法108条1項6号)を用いて株主から反社会的勢力を排除することも考えられます。
「取得条項付株式」とは、一定の事由が生じたことを条件として、会社が当該株式を取得することができる株式です。すなわち、上場前に、定款の定めとして、事業者の発行株式を取得条項付株式とし、その「取得事由」を株主が反社会的勢力に該当すると認められたとき、その「取得対価」を金銭等として規定しておけば、株主が反社会的勢力に該当すると認められた場合、金銭等を対価として交付することで当該株主からその有する全ての株式を強制的に取得することが可能となります(*5)。

(*1)特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ(7月31日公表)
(*2)http://www.nj.gov/oag/ge/docs/Forms/20.32-Multi-JurisdictionalPHD.pdf
(*3)推進会議(第6回)資料3「カジノ管理委員会について」
(*4)第3回 特定複合観光施設区域整備推進会議 議事録(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ir_promotion/ir_kaigi/dai3/gijiroku.pdf)18頁
(*5)長谷川敬一「株主からの反社会的勢力排除対策について」(NBL2011年12年1日号)


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員
(株)王将フードサービス 社外取締役(2014年6月~)
日特建設株式会社     社外取締役(2016年6月~)
政府IR推進会議     委員   (2017年4月~)

(主要関連論稿)
『カジノ法(IR推進法)の国会における主要争点(上)』(NBL1091号(2017年2月1日号)
『カジノ法(IR推進法)の国会における主要争点(下)』(NBL1091号(2017年3月1日号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。

カジノIRジャパン


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