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IR法制度:「特定複合観光施設区域整備法施行令」解説 第9回 マネロン対策(3)

2019-05-06

【IR資料室】

筆者:渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士 IR推進会議委員(略歴は巻末を参照)
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カジノIRジャパン:IR資料室>IR法制度~渡邉雅之弁護士 IR推進会議委員

「特定複合観光施設区域整備法施行令」解説

「特定複合観光施設区域整備法」(平成30年7月27日法律第80号、以下「IR整備法」又は「法」といいます。)の施行政令である「特定複合観光施設区域整備法施行令」(平成31年3月27日政令第72号、以下「IR整備法施行令」又は「施行令」といいます。)(*1)が公布されました。

本解説においては、IR整備法施行令の内容を逐条解説いたします。

なお、筆者は、特定複合観光施設区域整備推進会議の委員ですが、本解説の意見は個人的な見解に過ぎないことにご留意ください。

(*1)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ir_promotion/kokkaiteisyutsuhoan/shikoureian.pdf

「特定複合観光施設区域整備法施行令」解説 全体構成(緑は本ページ掲載コンテンツ)

Ⅰ.「特定複合観光施設」の中核施設の具体的な基準・要件(施行令第1条~第5条)
 1.国際会議場施設及び展示等施設(MICE施設)の基準(法第2条第1項第1号・第2号、施行令第1条・第2条)
 2.魅力増進施設の要件(IR整備法施行令第3条)
 3.送客施設の基準(施行令第4条)
 4.宿泊施設の基準(施行令第5条)
Ⅱ. 専らカジノ行為の用に供される部分(ゲーミング区域)の床面積の上限(施行令第6条)
 1.ゲーミング区域の床面積の上限
 2.絶対値による定めを行わなかった理由
 3.「特定複合観光施設の床面積」の解釈
Ⅲ.IR区域以外の地域でカジノ事業者等に関する広告物の表示等が制限されない施設(施行令第15条)
Ⅳ. マネー・ローンダリング対策(本人確認等の対象となる特定取引の範囲・現金取引報告(CTR)の対象となる取引の範囲)
 1.本人確認等の対象となる特定取引の範囲(犯収法施行令第7条第4号等)
 2.現金取引報告(CTR)の対象となる取引の範囲(法第109条第1項、施行令第16条)
 3.IR整備法上のその他のマネー・ローンダリング規制
Ⅴ. カジノ事業の免許等の欠格事由となる罰金刑の対象となる罪
 1.カジノ事業免許の申請者の欠格事由(法第41条第2項)
 2 カジノ事業免許等の欠格事由に係る罪
Ⅵ.カジノ施設の入場規制(日本人等への入場料の賦課及び入場回数制限、一定の者の入場禁止)、一定の者のカジノ行為の禁止規制の例外
 1 入場規制の禁止の例外
 2.カジノ行為の禁止規制の例外
Ⅶ.特定資金受入業務においてカジノ事業者に保証金の供託等(法第84条第2項・第3項、施行令第11条、第12条)
 1.特定資金受入業務(法第2条第8項第2号ロ)
 2.特定資金受入業務の規制(法第84条)
Ⅷ.特定複合観光施設区域の土地に関する権利の移転又は設定をする取引又は行為のうち、カジノ管理委員会の認可がない場合でも私法上の効力までは否定されないもの(施行令第 25条)
Ⅸ.申告・納付期限の日など入場料納入金及び納付金の納付手続等
 1.入場料納入金等の納付(施行令第40条)
 2.納付期限(施行令第41条・44条)
 3.入場料納入金等の保管(施行令第42条)
 4.認定都道府県等入場料納入金又は認定都道府県等納付金の払込み(施行令第43条)
 5.カジノ管理委員会への通知(施行令第44条、第46条)
 6.特別加算金(施行令第45条、第46条)
Ⅹ.施行期日

Ⅳ. マネー・ローンダリング対策
3 IR整備法上のその他のマネー・ローンダリング規制

IR整備法には、上記1の犯収法に基づく規制と上記2の現金取引報告(CTR)に加えて以下の規制が設けられています。

(1)取引時確認等の措置等の的確な実施のための措置(法第103条)

犯収法第11条では、「取引時確認等を的確に行うための措置」は努力義務に留まるものとされています。

これに対して、法第103条は、犯収法第11条の規定に関わらず、同条に基づく取引時確認等の措置、チップの譲渡等の防止のための措置(法第104条)、チップの譲渡等の禁止の表示(法第105条)及び取引の届出(法第109条第1項)(「取引時確認等の措置等」)を的確に実施するため、「犯罪収益移転防止規程」に従って、取引時確認をした事項に係る情報を最新の内容に保つための措置を講ずるほか、次に掲げる措置を講じなければならなりません(法的義務)。

①取引時確認等の措置等の的確な実施のための従業者に対する教育訓練の実施(法第103条第1項第1号)
②取引時確認等の措置等の的確な実施のための体制の整備(取引時確認等の措置等の的確な実施のために必要な業務を統括管理する者及び当該業務を監査する者の選任を含む。)(同項第2号)
③取引時確認等の措置等に関する評価の実施(同項第3号)
④前3号に掲げるもののほか、犯罪収益移転危険度調査書の内容又はカジノ事業の特性を勘案して講ずべきものとしてカジノ管理委員会規則で定める措置(同項第4号)

 
カジノ事業者は、取引時確認等の措置等の的確な実施のための措置に関して、以下の義務を負います(法第103条第2項、第68条第3項)。

・犯罪収益移転防止規程の遵守。
・取引時確認等の措置等の的確な実施のための措置(法第103条第1項)の的確な実施に関し、統括管理者のその職務を行う上での意見を尊重。
・「取引時確認等の措置等に関する評価」(上記③・法第103条第1項第3号)を行ったときは、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、遅滞なく、当該評価の結果をカジノ管理委員会に届け出る義務。
・カジノ事業者は、取引時確認等の措置等に関する監査報告の内容の通知を受けたときは、遅滞なく、これをカジノ管理委員会に届け出る義務。

 
これらの義務は、IR推進会議取りまとめ(法律)において、以下のとおり提言されたことを受けたものです。

〇IR推進会議取りまとめ(法律)
<制度設計の方向性>
カジノ事業者に対し、マネー・ローンダリング対策に係る業務について、万全の内部管理体制の整備を例外なく義務付けるべきである。
また、カジノ事業者が実施する自己評価及び監査の結果については、その都度カジノ管理委員会に報告させることとすべきである。

 

(2)チップの譲渡等の防止のための措置・チップの譲渡等の禁止の表示(法第104条・第105条)

カジノ事業者は、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、顧客がチップを他人(自己と生計を一にする配偶者その他の親族(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者及び当該事情にある者の親族を含む。)及び当該カジノ事業者を除く。)に譲渡すること及びチップを他人から譲り受けることを防止するために必要な措置を講じなければなりません(法第104条第1項)。

また、カジノ事業者は、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、顧客がチップをカジノ行為区画の外に持ち出すことを防止するために必要な措置を講じなければなりません(法第104条第2項)。

さらに、カジノ事業者は、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、顧客がチップを他人に譲渡し、若しくはチップを他人から譲り受け、又はチップをカジノ行為区画の外に持ち出すことが禁止されている旨を、本人確認区画及びカジノ行為区画に表示しなければなりません(法第105条)。

これらの措置は、IR推進会議取りまとめ(法律)において、以下のとおり提言されたことを受けたものです。海外(米国やシンガポール)にもない措置であり、世界最高水準のマネー・ローンダリング規制を目指すものです。

〇IR推進会議取りまとめ(法律)
<制度設計の方向性>
○カジノ施設内での顧客間のチップ、バウチャー等(以下「チップ等」という。)の譲渡については、原則として禁止し、日本独自の規制を導入すべきである。
○カジノ施設外へのチップ等の持ち出しについては、禁止すべきである。
○これらの規制の執行のための措置として、カジノ事業者に対し、
・カジノ施設利用約款において、上記の禁止事項について規定すること
・入退場ゲートやカジノ施設内に、上記の禁止事項を表示させること
・監視カメラや従業員による巡回警備等を通じて、チップ等の譲渡やカジノ施設外への持ち出しが行われないよう監視を行うこと
等の措置を講じることを義務付けるべきである。
○また、チップについて入退場ゲートで反応する IC タグを内蔵するなどの機能上の規制を設けることについて検討すべきである。

 


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員
(株)王将フードサービス 社外取締役(2014年6月~)
日特建設株式会社     社外取締役(2016年6月~)
政府IR推進会議     委員   (2017年4月~)

(主要関連論稿)
『カジノ法(IR推進法)の国会における主要争点(上)』(NBL1091号(2017年2月1日号)
『カジノ法(IR推進法)の国会における主要争点(下)』(NBL1091号(2017年3月1日号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。

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