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IRにおけるゲーミングライセンス制度 第13回「マサチューセッツ州のゲーミングライセンスを巡る2つの訴訟」

2015-04-20

【IR資料室】

第13回 マサチューセッツ州のゲーミングライセンスを巡る2つの訴訟
弁護士 渡邉 雅之 (略歴は巻末を参照)

今回は、マサチューセッツ州のゲーミングライセンスを巡る2つの訴訟事件について解説します。これを参考にして、次回、日本におけるIRの認定・選定・免許手続における訴訟について検討いたします。

1 Caesars v.s. Crosby and Wells

本件は、Caesars Entertainment Corporationおよびそのマサチューセッツ州のグループ会社(以下あわせて「Caesars」といいます。)が、Massachusetts Gaming Commission (マサチューセッツ・ゲーミング委員会:「MGC」)の議長であるStephen Crosbyと同委員会のInvestigation and Enforcement Bureau (調査執行局(背面調査の担当部局):「IEB」)のディレクターであるKaren Wellsに対して提起した訴訟です。

Massachusetts州では、現在、4つのカジノを設置することとされていますが、本件は、そのうちのRegion A (Eastern Massachusetts)におけるリゾートカジノの免許(Category 1 License)申請に関して起こった紛争です。

第11回(マサチューセッツ州の拡大ゲーミング法における免許付与の基準と拒絶事由)においても説明したとおり、マサチューセッツ州のカジノ事業者の選定手続は、第1フェーズ(RFA-1)において、申請者の背面調査等をして申請者の適確性を審査し、第2フェーズ(RFA-2)において、申請者の全体的(全体、財務、地域経済の発展への寄与、デザイン、負の面への対応)を審査するものです。

第2フェーズにおいて最終的に選考されたのは、Wynn Resort Limitedの子会社であるWynn MA, LLC(「Wynn」)でしたが、ここで問題とされているのは、第1フェーズの背面調査の段階で落選したSterling Suffolk Racecourse, LLC (「SSR」)です。Caesarsは、SSRに対しては少数の出資しかしていませんでしたが、SSRとの間でカジノの運営委託を受ける契約を締結していました。

MGCは、2013年10月18日に、SSRの免許申請に関して、同社の関係者であるCaesarsに以下の問題点があるとして、全文558頁にわたる報告書を公表しました(”Investigative Report for the Massachusetts Gaming Commission”(*1) )。

◇Caesarsが子会社を通じて、ロシアの犯罪組織との関連が疑われる個人が一部出資するホテル運営会社との間で、ライセンス契約を締結していること。

◇Caesarsが、米国連邦検察事務所ニューヨーク州南部管区 との間で不訴追合意をした者を雇用していたこと。

◇Caesarsが、ハイローラーである日系米国人を酩酊させてギャンブルをさせたという疑いで訴えられたことがあること。

◇Caesarsが、月額ベースで、キャッシュフローを超える負債を負っている債務過剰企業であること(*2)。

 
この報告書により、CaesarsはSSRとの間の運営委託契約を解消されました(SSRも免許申請を撤回しました。)。

これに対して、Commissionの議長であるCrosbyおよびIEBのDirectorであるWellsに対して、公的な立場で報告書を撤回すること、私的な立場で損害賠償請求をすることを求めて訴訟を提起しました。同訴訟は、マサチューセッツ州の地方裁判所で棄却され、米国連邦巡回控訴裁判所に控訴されました。

Caesarsは訴えの中で、Wynnが申請において立地としているEverettの土地のオーナーの一人が、Crosbyの知り合いで同人の会社に出資をしていたことがあるとして、申請手続にバイアスがあった、SSRとの契約を通じて認められていた暗黙の財産権が侵害された等の主張をしました。

米国連邦巡回控訴裁判所は、2015年2月13日、①Caesarsが憲法修正第5条の財産権および第14条のデュープロセスにおいて認識できる財産権を立証していない(国に対する暗黙の財産権は認められない。)、②商業上および社会的損害の重大なリスクを伴う免許申請に対して、高度の裁量権限を行使することが認められている州法(拡大ゲーミング法)の下では、修正憲法第14条の平等権に基づく救済は認められない、として、Caesarsの訴えを棄却しました 。(*3)

2 City of Boston v.s. Massachusetts Gaming Commission

本訴訟は、マサチューセッツ州のボストン市が、MGCに対して2015年1月5日に、同州地方裁判所に提起した訴えであり、現在もまだ係属中です。

この訴訟は、裁判所に対して、MGCが、Everettを立地としてリゾートカジノを開設するWynnに対して付与した免許(上記1も参照。)を無効とすることを求めるものです。

訴状(*4)によれば、訴訟の原因は以下のとおりです。

◇Wynnは、マサチューセッツ・ベイ交通局(MTBA)が所有しているEverett郊外の土地を取得してカジノへの通行ができるとしていたが、同土地の取得を拡大ゲーミング法で求められている60日以内にできてない(MGCはこれにもかかわらずWynnの免許を無効としていない。)。現状、ボストン市経由の交通網しかない。(*5)

◇Wynnによる免許申請手続において、ボストン市は、同カジノにとって自らをホストコミュニティー(host community)に該当すると申立てたが、MGCは形骸化した公聴会のみ行い、ボストン市を同カジノにとって周辺コミュニティーに過ぎないと位置付けた。

◇Everettにおいてカジノを開設する予定をしていた敷地について、Wynnは、同敷地の所有者であるFBT Everettという会社との間でOption契約を締結しているが、FBT Everettには犯罪者が出資しているので、FBT Everettは不適格であり、これとOption契約をWynnも不適格である。(MGCはFBT EverettおよびWynnを不適格としていない。)。また、これにより、WynnはEverettにおいてカジノを運営する敷地を有していないことになる。
上記1のとおり、Caesarsが背面調査で問題視されたのに、FBT EverettやWynnが問題とされないのはおかしいという主張です。

◇マサチューセッツ州の拡大ゲーミング法では、カジノの周辺地域の交通渋滞について緩和することが条件とされているのにもかかわらず、WynnがCharlestownにおいて講じた交通渋滞緩和計画は同法の要件からみて不十分である。それにもかかわらず、MGCはWynnの計画を認めた。

 

3 上記の2つの訴訟事件に学ぶこと

米国において、ゲーミングライセンスの付与について委員会の判断を訴訟では争うことができないと一般的には言われていますが、上記のとおり実際には訴訟が起こっております。

上記1の事件については、背面調査の判断が果たして客観的・公正であったかという点については筆者個人としては疑問が残りますが、背面調査がどのような方法でなされるのかという点ではとても参考になります。

上記2の事件からは、日本のIRにおいても、IR地区を導入する地方公共団体やIR事業者は土地所有者など周辺者を含め、反社会的勢力などがいないかという事前のチェックや、周辺地方公共団体への影響についてのチェックも不可欠であることを学べます。

(*1)http://massgaming.com/wp-content/uploads/SSR-Report-REDACTED.pdf
(*2)Caesars Entertainmentは2015年1月15日にChapter 11の申立をしました。
(*3)http://media.ca1.uscourts.gov/pdf.opinions/14-1681P-01A.pdf
(*4)http://www.cityofboston.gov/images_documents/City%20of%20Boston%20Complaint%20Gaming_tcm3-49486.pdf
(*5)大都市ボストン近郊に設置予定のWynnのプロジェクトは、交通インフラ対策が不十分であることも一因となり、工事進行の承認を得られず、開業見通しの見直しを余儀なくされていることは、カジノIRジャパンにおいて報道されているとおりです。
米国:マサチューセッツ州 4つのカジノIR設置。交通インフラ整備がキー


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
成蹊大学法科大学院 非常勤講師
(金融商品取引法担当、平成20年~)
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員

(主要関連論稿)
『IR導入に当たって検討すべきマネー・ローンダリング、反社会的勢力の関与の問題と提言』(NBL1036号・2014年10月15日号)
『日本におけるカジノ導入とギャンブル依存症問題』(週刊金融財政事情2014年10月6日号(3091号))
『カジノ導入に当たっての論点整理(上)・(下)』(共著)(NBL1014、1015号、2013年12月1日号・12月15日号)
「IR推進法の概要と検討すべき問題点」(週刊金融財政事情2014年1月6日号)
「カジノ法案が想定するビジネスモデルと各種規制」(ビジネス法務2014年3月号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。


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