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IRにおけるゲーミングライセンス制度 第23回「国における『特定複合観光施設区域』の認定機関」

2015-05-07

【IR資料室】

第23回 国における「特定複合観光施設区域」の認定機関
弁護士 渡邉 雅之 (略歴は巻末を参照)

今回以降は、第18回以降の英国の2005年ギャンブル法におけるリージョナル・カジノを開発する地方公共団体の選定手続を参考にしながら、わが国における、地方公共団体の申請に基づく、国による「特定複合観光施設区域」の認定の手続・基準について検討します。
今回は、国の認定機関について中心に検討します。

1 IR推進法案・IR実施法案の基本的な考え方

IR推進法案2条2項は、『この法律において「特定複合観光施設区域」とは、特定複合観光施設を設置することができる区域として、別に法律で定めるところにより地方公共団体の申請に基づき国の認定を受けた区域をいう。』と規定しておりますが、国の認定主体や手続については規定していません。

IR議連の「特定複合観光施設区域整備法案(仮称)~IR実施法案~に関する基本的な考え方」(「IR実施法案の基本的な考え方」)には、以下のとおり規定されています(赤字部分は筆者によるもの)。

●地方公共団体の申請に基づき、国がIRの設置区域・地点を指定する。
カジノを含むIRが設置される区域・地点の指定は、地方公共団体による提案・申請をもとに、国がこれを評価・判断し、指定する。この際、国はIR推進について基本方針を策定するなどその方向性を示す必要がある。カジノはこのIRの内部でのみ、その施行が可能となる。


●特定複合観光施設区域の数と指定の在り方
特定複合観光施設区域及びその中に設置されるカジノを含む特定観光施設は、カジノ施行の安全性、安定性、健全性を担保し、その政策的効果を確実にするために、実施法制定後の最初の認定区域は2、3箇所程度で限定的に施行し、効果、課題を十分に評価、検証しながら、その着実な施行を確認した後に、段階的に試行数を増やしていく考え方を基本とする。
区域・施設の総数を限定する施策は、公平性、透明性のある判断基準、手続きにより、地方公共団体に不公平感が生じない配慮をした制度設計が必要である。

すなわち、①地方公共団体による提案・申請をもとに国が評価・判断するに際しては、IR推進について基本方針を策定するなどその方向性を示す必要があること、②特定複合観光施設区域及びその中に設置されるカジノを含む特定観光施設の数を限定するため、公平性、透明性のある判断基準、手続きにより、地方公共団体に不公平感が生じない配慮をした制度設計が必要であること、が求められています。

もっとも、この中で掲げられている「IR推進についての基本方針」および「公平性、透明性のある判断基準、手続き」が具体的にどのようなものなのかは示されていません。

本稿から数回にわたって、英国の2005年ギャンブル法を参考にして、公平性、透明性のある国による「特定複合観光施設区域」の認定手続・判断基準について具体的に検討してみたいと思います。

2 「特定複合観光施設区域」を認定する国の機関

以下では、「特定複合観光施設区域」を認定する国の機関について検討します。

(1)特定複合観光施設区域整備推進本部
IR推進法案の第3章においては、内閣に、「特定複合観光施設区域整備推進本部」を置くこととされています(同法案14条)。
本部長は内閣総理大臣をもって充てられ(同法案17条)、副本部長、本部員は国務大臣をもって充てられます(同法案18条、19条)。
同本部の所掌事務は、①特定複合観光施設の整備の推進に関する総合調整に関すること、②特定複合観光施設区域の整備の推進を総合的かつ集中的に行うために必要な法律案及び政令案の立法に関すること、③特定複合観光施設区域の整備の推進に関する関係機関及び関係団体との連絡調整に関することとされています(同法案15条1項)。

同本部は、上記所掌事務のとおり、IR実施法案及びそれに関連する関連命令等の策定が主たる役割であり、「特定複合観光施設区域」を認定する国の機関にはならないと考えられます。

また、同本部の主務大臣である内閣総理大臣は、「内閣府の長である内閣総理大臣」ではなく、「内閣の長である内閣総理大臣」(同法案15条2項)であり、IR実施法案を所管する主務大臣ではないことに鑑みても、特定複合観光施設区域の認定の主体とはならないと考えられます。

(2)カジノ管理委員会
カジノ管理委員会は、内閣府に外局として置かれるものであり、カジノ施設の設置および運営に関する秩序の維持及び安全の確保を図る為、カジノ施設関係者に対する規制を行う機関です(IR推進法案11条)。

カジノ管理委員会は、特定複合観光施設区域に認定された地方公共団体に選定されたIR事業者に対して許可(免許)を付与する役割を有しますが(同法案2条1項)、あくまでもIR事業者その他のカジノ施設関係者に対する監督をするのが役割であり、「特定複合観光施設区域」を認定する主体とはならないと考えられます。

(3)内閣府の長たる内閣総理大臣・特定複合観光施設審議会(仮称)
「特定複合観光施設区域」を認定する主体は、IR実施法案の所管大臣、すなわち、主務大臣になると考えられます。

筆者は、「第16回 カジノ管理委員会の位置付け・主務大臣」(*1)において記述したとおり、IR実施法案にかかる主務大臣は、内閣府の長である内閣総理大臣になると考えております。したがって、「特定複合観光施設区域」を認定する主体も内閣府の長である内閣総理大臣となると考えます。

もっとも、内閣府の長である内閣総理大臣には、「特定複合観光施設区域」を認定する知識、能力、時間のいずれもありません。そこで、英国のカジノ・アドバイザリー・パネルのような審議会を置き、その審議会に「特定複合観光施設区域」について諮問し、認定に関する答申を受けて、その答申を参考にして「特定複合観光施設区域」を認定することが考えられます。

実は、これはIR議連においても既に検討されてきたことであり、下記のとおり、素案では、「特定複合観光施設審議会(仮称)」が主務大臣のIRを実施する地方公共団体の選定についての諮問を受けて答申することとされています。

渡邊弁護士-23回-画像

3 特定複合観光施設審議会(仮称)

(1)組織法上の位置付け
組織法上は、内閣府設置法37条3項に基づき、内閣府本府に置かれる審議会等とすることが考えられます。現状、同規定に基づき置かれる審議会等には以下のものがあります。

民間資金等活用事業推進委員会 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律
官民競争入札等監理委員会 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
食品安全委員会 食品安全基本法
子ども・子育て会議 子ども・子育て支援法
独立行政法人評価委員会 独立行政法人通則法
公文書管理委員会 公文書等の管理に関する法律
障害者政策委員会 障害者基本法
アルコール健康障害対策関係者会議 アルコール健康障害対策基本法
原子力委員会 原子力基本法及び原子力委員会設置法
地方制度調査会 地方制度調査会設置法
選挙制度審議会 選挙制度審議会設置法
衆議院議員選挙区画定審議会 衆議院議員選挙区画定審議会設置法
国会等移転審議会 国会等の移転に関する法律
統計委員会 統計法
情報公開・個人情報保護審査会 情報公開・個人情報保護審査会設置法
公益認定等委員会 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
再就職等監視委員会 国家公務員法
退職手当審査会 国家公務員退職手当法
消費者委員会 消費者庁及び消費者委員会設置法

 
(2)審議会の委員としてふさわしい者
審議会の委員としては、法令の専門家だけでなく、経済の専門家、観光産業や地域振興についての専門家やギャンブル依存症やマネーローンダリング・反社問題などのカジノのもたらす負の影響についての専門家など幅広く求めるべきでしょう。

「特定複合観光施設区域」を認定について事実上審議会の意見で決められることになるため、地方公共団体への不公平感がないようにするため、委員長・委員の選任については、国会の両議院の同意人事とするのがよいと考えられます。上記(1)の審議会・委員会のうち、赤字のものは、委員について国会の両議院の同意人事とされているものです。

国会同意人事の対象である審議会の委員は、「国会の両院又は一院の議決又は同意によることを必要とする職員」として、特別職の国家公務員に該当することになります(国家公務員法2条3項9号)。これに対して、国会同意人事ではない場合は、一般職の公務員となります。

「第18回 英国におけるリージョナル・カジノ開発地方公共団体選定手続」(*2)において説明したとおり、カジノ・アドバイザリー・パネルのメンバーは、公務に関する7原則(Norlan原則)を遵守することを誓約しています。7つの原則とは、①無私無欲(Selflessness)、②誠実さ(Integrity)、③客観性(Objectivity)、④説明責任(Accountability)、⑤開放性(Openness)、⑥正直さ(Honesty)、⑦リーダーシップ(Leadership)が適用されます。

国家公務員倫理法は、一般職の公務員について適用対象としているため、特定複合観光施設審議会(仮称)の委員長や委員には適用されない可能性が高いですが、高度の清廉性が求められるため、同様の倫理規程が定められることが望まれます。

(3)事務局
IRについて十分知識を有する者が望ましいため、特定複合観光施設区域整備推進本部の事務局(IR推進法案22条)の担当者であったもの(の一部)が事務局の担当者となることが望ましいと思われます。また、同審議会の事務局の担当者であったもの(の一部)がカジノ管理委員会の事務(総)局の担当者となることが望ましいと思われます。

(4)審議会の公開
わが国では、日米構造問題協議において、審議会等の原則公開が求められ、1995年(平成7年)9月29日に、「審議会等の透明化、見直し等について」が閣議決定されました。
閣議決定においては、①審議会等の委員の氏名等については、あらかじめまたは事後に公表すること、②会議または議事録を速やかに公開することを原則とし、議事内容の透明性を確保すること、③議事録および議事要旨の公開にあたっては、所管府省の一般の閲覧、複写が可能な一括窓口を設けるとともに、一般のアクセスが可能なデータベースやコンピュータ・ネットワークへの掲載に努めることとされています。
特定複合観光施設審議会(仮称)についても、同閣議決定に基づき、審議を公開し、速やかに議事録等を公表することが望まれます。

(*1)「第16回 カジノ管理委員会の位置付け・主務大臣」へのリンク
(*2)「第18回 英国におけるリージョナル・カジノ開発地方公共団体選定手続」へのリンク


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
成蹊大学法科大学院 非常勤講師
(金融商品取引法担当、平成20年~)
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員

(主要関連論稿)
『IR導入に当たって検討すべきマネー・ローンダリング、反社会的勢力の関与の問題と提言』(NBL1036号・2014年10月15日号)
『日本におけるカジノ導入とギャンブル依存症問題』(週刊金融財政事情2014年10月6日号(3091号))
『カジノ導入に当たっての論点整理(上)・(下)』(共著)(NBL1014、1015号、2013年12月1日号・12月15日号)
「IR推進法の概要と検討すべき問題点」(週刊金融財政事情2014年1月6日号)
「カジノ法案が想定するビジネスモデルと各種規制」(ビジネス法務2014年3月号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。

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