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IRにおけるゲーミングライセンス制度 第30回「特定複合観光施設区域の申請段階での地方公共団体へのカジノ事業者やアドバイザーの関与」

2015-06-10

【IR資料室】

第30回 「特定複合観光施設区域」の申請段階での地方公共団体へのカジノ事業者やアドバイザーの関与

弁護士 渡邉 雅之 (略歴は巻末を参照)

今回は「特定複合観光施設区域」の申請段階での地方公共団体へのカジノ事業者やアドバイザーの関与について検討いたします。

1 カジノ事業者によるIRの開発計画・開発コンセプトの公募

「特定複合観光施設区域」の申請をする地方公共団体は、統合型リゾート(IR)やカジノ運営についてノウハウがあるわけではありません。

そこで、地方公共団体において、IRの開発コンセプトの骨子が固まった段階(少なくとも民間所有の土地を含む「特定複合観光施設区域」の予定地、「大都市型」か「地方型」の別はこの段階で決まっているべきでしょう。)で、カジノ事業者(必ずしもカジノ事業者に限定する必要はないでしょう。)に対してIRの開発計画や開発コンセプトを公募すること(Request for Concept(「RFC」))が考えられます。IR議連においても、このような手続を前提としているようです。
このような手続を経て、IR設置のノウハウを吸い上げるわけです。

RFCの内容としては、①IRの建設コンセプトとデザイン、②開発投資規模、③地域経済への寄与度、④地域住民の雇用規模、⑤地域財政改善への寄与度、⑤IR導入による負の影響に対する対策などが考えられます。

「大都市型」IRについては、さらに、「国の経済の活性化、財政の改善、社会保障の充実への寄与」や「国の観光産業等の国際競争力の強化、文化芸術・クールジャパンの振興への寄与」についてのコンセプトや予測についてもRFCの対象とすべきでしょう。

「地方型」IRについては、「地域観光の振興、文化芸術・クールジャパンの振興への寄与」や「地域創生の必要性」についてのコンセプトや予測についてもRFCの対象とすべきでしょう。

地方公共団体としては、第2段階におけるIR事業者の選定における公平性・透明性を確保するために、①カジノ事業者がRFCに応募しなくても必ずしもIR事業者の選定手続において不利になることはないこと、②IR事業者の選定の段階ではRFCの内容と異なるものでよいこと、および、③採用された開発計画や開発コンセプトが特定のカジノ事業者のものであったとしても、必ずしも当該カジノ事業者がIR事業者の選定手続において有利になるわけではないことを前提として表明すべきでしょう。

国としても、公正性・透明性のあるIR事業者の選定がなされるか監視することが必要となりますが、この点についてはまた別稿で検討いたします。

なお、この論点は、一つの「特定複合観光施設区域」内にいくつの「特定複合観光施設」(IR)が認められるかという問題とも大きくかかわります。
一つのIRしか認められないとすれば、選定されるのは一つのIR事業者となりますので、公平性・透明性はより重要となります。
この論点についても別稿で検討いたします。

2 アドバイザーの関与と利益相反管理

IRを導入したい地方公共団体は、現段階でも既にコンサルタントや監査法人などのアドバイザーを採用して、IR導入による経済・社会影響度についての調査を行っているところも多いです。

今後、IR推進法およびIR実施法が成立して、「特定複合観光施設区域」の申請の段階になると、IR導入を希望する地方公共団体によるアドバイザーへの依頼は活発化するでしょう。

人気のアドバイザーは、引っ張りだこで、複数の地方公共団体からの依頼が殺到するかもしれません。

しかしながら、アドバイザーは、特定の地方公共団体との間でアドバイザリー契約を締結すると、当該地方公共団体に対して、忠実義務(コモンローではフィデュシャリーデューティー(信任義務)といいます。)を負うことになるため、他の地方公共団体に対して、アドバイザリーサービスを提供すると忠実義務違反となる可能性があります。

「特定複合観光施設区域」において、「大都市型」と「地方型」の2つの類型が認められる場合において、「大都市型」の認定を目指す地方公共団体1都市と「地方型」の認定を目指す地方公共団体1都市の合計2つの地方公共団体のためにアドバイザリーサービスを提供することは忠実義務違反とならないと考えられます。

これに対して、「大都市型」の認定を目指す2つの地方公共団体、または、「地方型」の認定を目指す2つの地方公共団体に対してアドバイザリーサービスを提供することは忠実義務違反となり、利益相反として許されないと考えらえます。
情報の流用も考えられますから、このような行為は厳に控えるべきでしょう。

この点、たとえば、「大都市型」の認定を目指す地方公共団体のアドバイザーが、他の「大都市型」の認定を目指す地方公共団体から、忠実義務を負わない範囲内での情報提供を求められた場合はどうでしょうか。
①当該コンサルティング会社や監査法人などにおいて、地方公共団体にアドバイザリーサービスを提供しているチームと別のチームが担当し、アドバイザリーサービスを提供しているチームとの間で情報隔壁(チャイニーズウォール)を構築し、かつ、②アドバイザリーサービスを提供している地方公共団体に事前に状況を開示した上で同意を得た場合には、他の地方公共団体に対して忠実義務を負わない範囲内の情報提供は可能であると考えられます。
すなわち、利益相反が管理されていると言えます。

また、「特定複合観光施設区域」の認定段階において、国のアドバイザーとなっている場合も、忠実義務の問題や情報流用の観点から、特定の地方公共団体のアドバイザーには就任することはできないと考えられます。

アドバイザーの利益相反の問題は、第一段階の「特定複合観光施設区域」の認定段階では、特定の地方公共団体のアドバイザーとなっている場合に、第二段階のIR事業者の選定段階において、IR事業者のコンソーシアム(企業連合)側のアドバイザーとなることができるかという問題もあります。

「特定複合観光施設区域」の認定の段階で当該地方公共団体のアドバイザーであったものが、当該地方公共団体においてIR事業者となることを申請する特定のIR事業者のコンソーシアムのアドバイザーとなることは、忠実義務や情報流用の観点で控えるべきでしょう。
これに対して、第一段階の「特定複合観光施設区域」の認定段階で他の地方公共団体のアドバイザーであったものが、第二段階のIR事業者の選定段階においてIR事業者のコンソーシアムのアドバイザーになることは何ら問題ないでしょう。

それでは、「大都市型」のIRとして2つの地方公共団体A市・B市が認定を受けた場合において、カジノ事業者であるX社とY社が両方の地方公共団体において、IR事業者となることの申請をしている場合に、A市のIR事業者の選定手続においてはX社、B市のIR事業者の選定手続においてはY社のアドバイザーとなることは許されるでしょうか。

このような場合は必ずしも忠実義務が衝突するわけではありませんが、情報流用のおそれがあるので、①X社・Y社に対して、他の都市において他方のアドバイザーとなることを事前に開示し、それぞれの同意を受けた上で、②アドバイザー会社において別のチームが担当し、それぞれのチームの間に情報隔壁(チャイニーズウォール)がある場合には、利益相反管理されているものとして許されると考えられます。


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
成蹊大学法科大学院 非常勤講師
(金融商品取引法担当、平成20年~)
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員

(主要関連論稿)
『IR導入に当たって検討すべきマネー・ローンダリング、反社会的勢力の関与の問題と提言』(NBL1036号・2014年10月15日号)
『日本におけるカジノ導入とギャンブル依存症問題』(週刊金融財政事情2014年10月6日号(3091号))
『カジノ導入に当たっての論点整理(上)・(下)』(共著)(NBL1014、1015号、2013年12月1日号・12月15日号)
「IR推進法の概要と検討すべき問題点」(週刊金融財政事情2014年1月6日号)
「カジノ法案が想定するビジネスモデルと各種規制」(ビジネス法務2014年3月号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。


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