【インタビュー&特集記事】
ぴあ株式会社の林和男氏(特別顧問)は学生であった1972年に矢内廣氏(代表取締役社長)らと雑誌『ぴあ』を創刊した同社の創業メンバーで、学生ベンチャーのパイオニア的存在である。林氏は小泉政権の時代から、政府の知的財産戦略本部、日本経済団体連合会(経団連)においてライブエンタテインメント産業の発展に向けた調査と提言を行ってきた。その提言の一つは、カジノを含む統合型リゾート(IR)の実現である。今回、林氏にライブエンタテインメントの視点から、IRを語ってもらった。全5回。
知的財産戦略本部や経団連の活動に参加
私は大学3年の時(1972年)に矢内廣(代表取締役社長)らとぴあ株式会社を創業しました。矢内、私はともに中央大学法学部の出身ですが、私は矢内の一年後輩です。
私はもともと映画が好きで、中央大学の映画研究会に所属していて、当時は映画監督を志望していました。そこで、矢内との出会いがありまして、アルバイト仲間であった他大学の学生などと一緒に創業したわけです。そして、『ぴあ』という情報誌を首都圏で創刊しました。いわゆる学生ベンチャーの走りですね。
私は43年のぴあ株式会社の歴史の中で、主に出版部門と管理部門を担当していましたが、2007年からは「ぴあ総合研究所」(通称、ぴあ総研)の社長兼所長も務めました。それが一つの契機となり、当時の小泉首相が設置した知的財産戦略本部や経団連のエンタテインメント、観光関連の活動に参加することになりました。
ライブエンタテインメント産業の振興の視点でカジノを含む統合型リゾート(IR)を推進
私の政府や経団連における活動の視点は、ライブエンタテインメント産業の振興です。ぴあ株式会社の事業分野はライブエンタテインメントです。我々は長くその発展の歴史に関わってきましたが、同時に課題意識も強く感じています。それが、経団連における調査・提言活動、そしてカジノを含む統合型リゾート(IR)への関心の背景です。
私が経団連のプロジェクトにおいて提言したのは、日本においてライブエンタテインメントの集積地を作ることでした。集積地には二つの大きな考え方があり、一つはブロードウエイ型、もう一つはエンタテインメント・リゾート型です。
ブロードウエイ型集積地とは、ニューヨーク42番街をモデルとしています。エンタテインメント・リゾートはラスベガスのモデル、今の言葉ではカジノを含む統合型リゾート(IR)です。
ラスベガスのライブエンタテインメント(ショー)では、常設劇場のシルク・ド・ソレイユ、セリーヌ・ディオンの長期公演、ジークフリード&ロイのマジックショーなど大掛かりなイベントが有名です。ボクシングは一年に何回か大きなイベントがあります。
私はそれらラスベガスのライブエンタテインメントを目の当たりにし、日本へもエンタテインメント・リゾートを導入すべきであると強く感じました。
日本のライブエンタテインメントにおける強みは、独自の魅力的なコンテンツを豊富に有すること
日本のライブエンタテインメントにおける強みは、独自の魅力的なコンテンツを豊富に有することです。日本のライブエンタテインメントの力は、アジアでは際立っています。
これは、日本がIRを実現するうえで非常に大きなアドバンテージです。マカオやシンガポールでは、欧米のコンテンツを輸入または模倣する例が多く、その結果、ライブエンタテインメントは大きな存在感を発揮していません。
ライブエンタテインメントはインバウンド観光においても重要な役割を果たします。最近は訪日外国人数が急速に増加しています。訪日外国人数は2014年には1341万人でしたが、政府は2020年に2000万人、2030年に3000万人に拡大させる戦略です。私は「訪日した人々は、夜をどう過ごし、楽しむのだろうか?」と思います。
とくに、家族連れの人々です。ラスベガスでは、夜はライブエンタテインメントを観に行くわけです。日本においてもIRがライブエンタテインメントを集積すれば、インバウンド観光の課題解決にも大きく寄与することになります。
日本のIRの議論はカジノに偏り過ぎ。広い視点で議論すべき
現状の日本のIRを巡る議論は、カジノに偏り過ぎていると感じます。日本が本当にやろうとしているIRは、カジノだけでなく、ホテル、劇場・アリーナ、MICE、文化施設、ショッピングセンターなどを含みます。
それらはその場所に行くことにより楽しみ、感動を得るものです。広義にはすべてライブエンタテインメントと言ってもいいでしょう。カジノに特化した議論では、本来のIRのイメージや社会的意義を広く社会に伝えるのは難しいのではないでしょうか?
カジノIRジャパン
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