【インタビュー&特集記事】
ぴあ株式会社の林和男氏(特別顧問)は学生であった1972年に矢内廣氏(代表取締役社長)らと雑誌『ぴあ』を創刊した同社の創業メンバーで、学生ベンチャーのパイオニア的存在である。林氏は小泉政権の時代から、政府の知的財産戦略本部、日本経済団体連合会(経団連)においてライブエンタテインメント産業の発展に向けた調査と提言を行ってきた。その提言の一つは、カジノを含む統合型リゾート(IR)の実現である。今回、林氏にライブエンタテインメントの視点から、IRを語ってもらった。
全5回で、今回は3回目。
2001年には政府にクールジャパン、ビジットジャパンの起源となる動き
現在の政府の成長戦略であるクールジャパン、ビジットジャパンの起源は、2001年以降の小泉政権の時代であったと思います。小泉政権は2002年に知的財産戦略会議(2003年に知的財産戦略本部に移行)を立ち上げ、2003年4月に観光立国宣言を行いました。
ここで、知財立国、観光立国という言葉が登場したわけです。文化エンタテインメント産業の育成と海外展開、インバウンド観光の拡大が重要な成長戦略に位置付けられたわけですね。
経団連も政府の動きに呼応
政府の動きに、経団連も呼応しました。2003年に経団連の中に「エンターテインメント・コンテンツ産業部会」(依田巽会長。当時エイベックス社長)が立ち上がりました。当時は重厚長大産業が主力だった経団連において、サービス産業の存在感が高まり始めた時代です。
産業部会には日本を代表するエンタテインメント企業が多く参加しました。音楽、ゲームソフト、映画・映像、出版・流通、放送など業種も多様でした。
私たちぴあ株式会社も経団連のメンバーであり、産業部会の一員でした。
私たちは産業部会の中に、「21世紀型ライブエンタテインメント・ビジネス研究会」という分科会を作りました。分科会はライブに特化し、興行、プロダクション、広告、テレビ局など、その主要プレイヤーを集めたわけです。そこで、日本のライブエンタテインメント・ビジネスがどういう方向に行くべきかという議論をしました。
私がこの分科会の事務局長の役割で実務を担当しました。
少し話が横にそれますが、当時、知的財産戦略の視点では、デジタルなどの複製型コンテンツ、著作権ビジネスが注目される傾向がありました。エンタテインメント産業と言葉で一括りにすると、どうしてもライブの概念が抜け落ちる傾向がありました。
ところが、我々の主張は違っていて、そのような複製型コンテンツを生み出す源泉はライブ、生ものであると。ライブエンタテインメントの活力があってこそ、その先に複製型コンテンツがあるのだと考えました。日本はその重要性にもっと気が付かなければいけないと主張したわけです。
経団連の中でエンタテインメント・リゾート(IR)の早急な実現を提案
分科会は、2006年春まで3年ほど活動し、報告書を作成しました。そこでの提言が、日本においてライブエンタテインメントの集積地を作ること、ブロードウエイ型とエンタテインメント・リゾート型(カジノを含む統合型リゾート=IR)を早急に実現することでした(第1回を参照)。
その報告書は経団連から知的財産戦略本部に上がり、その結果、政府の知的財産推進計画にライブエンタテインメントというジャンル、言葉がしっかりと位置付けられました。
カジノIRジャパン
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