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谷岡一郎「カジノ反対派の形成とその対応策」 – Ⅰ:カジノに反対する人々

2015-08-12

【IR資料室】

大阪商業大学 学長・総合経営学部 教授 谷岡一郎

カジノ反対派の形成とその対応策
―カジノ具体的プラン作成時における基本哲学と収益金の使途に関する提言-

<目次>
序:カジノ合法化の時代
Ⅰ:カジノに反対する人々
  主義・信条・哲学  利害関係  反対派の論拠

Ⅱ:反対の論拠について(コメント)
  ギャンブルは悪か  治安と風紀 暴力団の関与 青少年への悪影響
  ギャンブル依存の問題 社会的コスト雑感
Ⅲ:ラスト・リゾート
Ⅳ:収益金使途の哲学
  何のためのカジノか  収益金の使途
終章:イギリスの合法化に学ぶ

2004年9月『ギャンブリング*ゲーミング学研究』創刊号より転載

Ⅰ.カジノに反対する人々

新たなギャンブリング(ゲーミング)に関する法律案に対する反対の声は、(どんな法案でも似たりよったりだが)大きく分けて通常2つの理由によってなされる。
ひとつめが「主義・信条・哲学に反する」という理由、そしてもひとつは「利害関係」である。後者の利害関係は反対派のみならず賛成派をも形成するのが常である。両者は密接に関係し合っており、不可分のものである。

Ⅰ-1.主義・信条・哲学
最初の「主義・信条・哲学に反する」という理由で反対する人々を、あえて分類するとすれば3つ考えられる。

1つめは自身の持つ倫理や道徳、宗教が正しくない行為だと教えるケースで、要するに本人の持つ「way of life」に違反しているから「悪」であるという反論しようのない理由でカジノに反対する人々である。こうした反対派を「way of life」派と呼んでおく。

2つめのグループは、カジノは青少年に悪影響を与える可能性が高いから反対だと主張する人々である。子供を持つ親や教師に多い主張であり、「青少年への悪影響」派と呼ぶことにしよう。
前述したがtoto(スポーツ振興くじ)の法案の時にも大きな反対勢力を形成し、その実、中身のなかった主張であったことは前に述べた。

3つめの考え方として、カジノを含めすべてのギャンブルによる「濡れ手に粟」状態を見ることが、人としてコツコツ働く勤労の美徳を冒涜するが故に「悪」であるとする人々がいる。
この理由はそもそも、刑法185条~187条によって国民に対し罰則付きでギャンブル行為を禁止する法理のひとつとして位置付けられている論理であり、従って学者の中によく見られる見解である。「勤労の美徳崩壊」派と呼んでおく。

主義・信条・哲学を理由とする反対かどうか定かではないが、4つめとして、カジノを作ると社会や家庭の崩壊が進むと考えるグループがある(「社会的コスト」派とする)。
特に過度のギャンブル(ギャンブル依存症)による本人、もしくは周囲に対する影響(社会的コスト)が大きすぎると考えるのである。
社会的コストとは、本人の失職、窃盗などの犯罪、それに付随する司法システムのコスト、カウンセリングや治療代、プラス家庭の物理的・精神的苦痛や本人の自傷(自殺未遂など)行為などが含まれる。

これら4つの派のコメントは後回しにして、「利害関係」の理由によってカジノに反対する人々の分類を先に済ませよう。

Ⅰ-2.利害関係
カジノが出来ることで大きな影響(良しにつれ悪しきにつれ)を受ける代表は、「地元住民」であろう。多くの場合、カジノという新産業への期待より、心配が先に来る。

反対する人々の絶対数は少なく、賛成する人々よりも運動の核ができやすい面もあり、ほとんどの住民運動はまず反対派を形成するものと考えてよい。
パチンコ・ホールや場外馬券(もしくは舟券、車券)売場などの建設計画への対応を例にとるまでもなく、反対派の理由は治安の悪化、風紀の乱れ、教育環境の悪化などである。

住民の中にはカジノ誘致に賛成する者もいるはずだ。たとえば近隣の外食産業やタクシー業、建築関係、旅行サービス業などは売り上げの上昇を期待するだろう。
カジノ客を目的に新商売(たとえば電子機器や新タイプの質屋)を考える者もいるかもしれない。しかしこれら賛成派グループは、運動の核になる人物がいない限り、具体的な追い風とはなりにくいものである。

結局、マスコミなどに登場する住民運動は反対派が中心となる。実際に治安の悪化や風紀の乱れが起こるか否かは、あまり議論されない。その恐れがあればそれで充分なのである。

カジノビジネスがスタートした場合、競合する業種がいくつか考えうる。パチンコ、競馬、宝くじなど、既存のギャンブルは客や売り上げが減少する可能性がある。
これが利害関係を理由に反対する勢力の2つめである(「既存ギャンブル産業」と呼ぶことにする)。パチンコは特に類似のマシン・ゲーム(カジノにおけるスロット・マシン)が競合するため、危惧する声はよく聞く。
その点、競馬などの公営競争や宝くじはあまり共通点がないと考えられるためか、そのような声はあまり聞かれない。パチンコも公営競争も宝くじも(ついでにtotoも)その見識においてやや暗い面があるのだが、どこがどう暗いのかはあとで述べることにしよう。

もうひとつ実質的に一番大きな利害関係が存在する。それはすでに違法のカジノ・バーなどを経営するグループで、早い話がヤクザたち(「組織暴力団」と呼ぶ)である。
合法のカジノ・バーであれば、誰が好き好んでアングラ(違法な)カジノに行くだろうか。新しく合法化されつつあるカジノは地方公共団体が選定し、国が厳格に監視・監督した民間の経営主体であり、不正行為(イカサマ)の心配はほとんどない上に、昼間でも堂々といけるのである。
結果として組織暴力団関係者は法案をつぶそうと(裏でコソコソと)行動する可能性が高い。アメとムチを駆使してでもカジノ合法化をつぶそうとするだろうが、あまり表に出てくることはないだろう。

厳密に利害関係者と言えるかどうかはわからないが、「近隣の自治体」はかなり影響を受けるだろう。カジノの客は近隣の自治体からやって来るわけで、わかりやすく言えばとなりの街へお金を落としに行く。
さらになお悪いことに、過度のギャンブルに起因する問題を自分の自治体に持ち帰る。つまり、隣の自治体のカジノによる社会的コストを支払うのは、こちらの(カジノのない)自治体なのである。
隣の街にカジノができることには反対すべきだが、もし本当に隣街にカジノができるなら、自分の場所にカジノが出来ることには賛成すべきだという、少々おかしな利害関係となる。
このような事例は、ニューオーリンズやデトロイトなど実際にいくつも存在するのである。

Ⅰ-3.反対派の論拠
カジノに反対する人々が掲げる反対理由は大別して5つある。
「①ギャンブルはそもそも悪である(勤労の美徳が失われる)」、「②治安が悪くなり、風紀が乱れる」、「③暴力団が関与する」、「④青少年に悪影響がある」、「ギャンブル依存症による家族崩壊が増える」の5つである。

これらはあくまで反対するための論拠であって本心が別のケースもある。たとえばパチンコ店を経営するグループが反対派として活動する時、一番の心配事である「強力なライバルができると困る(うちがつぶれる)」という本心は表向きの反対理由としては公表しないだろう。

これまでに登場した反対グループおよび派を図示すると次のようになる。

<カジノに反対する人々>

反対理由(大分類) 反対派・グループ 反対の核となるグループ(人々)の例
主義・信条・哲学 「way of life」 宗教関係者
「勤労の美徳崩壊」 法律家、道徳家
「青少年への悪影響」 PTA、日教組
「社会的コスト」 社会学者、医者(精神医学)
利害関係 「地元住民」 地域住民、主婦連
「既存ギャンブル産業」 パチンコ産業など
「組織暴力団」 ヤクザ( → 地元有力者)
「近隣自治体」 地域商工会議所、役所

 
<反対派の論拠>

① ギャンブルはそもそも悪である(勤労の美徳が失われる)
② 治安が悪くなり、風紀が乱れる
③ 暴力団が関与する(資金源となる)
④ 青少年に悪影響がある
⑤ ギャンブル依存症による家庭崩壊が増える(社会的コストが大きい)

 
図中には反対派の分類以外に「反対派の核となるグループ(人々)の例」も挙げてあるが、あくまでもシンボリックなものであり、ステレオタイプ的に考えてもらいたい。

むろん複数の理由で複数の反対派の活動をするケースや、逆に一体化して統一的反対集団となるケースもあろう。図はあくまで知識や前提の集約・整理が目的である。

カジノIRジャパン


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