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大谷信盛「ギャンブル合法化とソーシャル・マーケティング」(6)

2015-08-31

【IR資料室】

大谷 信盛

ギャンブル合法化とソーシャル・マーケティング
――ギャンブル依存問題に取り組む米民間団体に関する考察――

<目次>
1 はじめに
 1-1 ギャンブル依存問題への認識
 1-2 論文の目的と分析手法
2 問題ギャンブリング全米評議会(National Council on Problem Gambling)
 2-1 設立背景と目的
 2-2 活動内容
 2-3 財源
3 責任あるゲーミング全米センター(National Center for Responsible Gaming)
 3-1 設立背景と目的
 3-2 活動内容
 3-3 財源
4 比較分析
5 日本のレッスン
 5-1 戦略的ソーシャル・マーケティングのすすめ
 5-2 今後の研究テーマ
6 まとめ

『大阪商業大学アミューズメント産業研究所紀要』 第16号(2014年刊)より転載

責任あるゲーミング全米センター(National Center for Responsible Gaming)
3-1 設立背景と目的

(1)設立の経緯
1996年、カジノ関連企業7社からの寄付を原資に非営利団体として責任あるゲーミング全米センター(NCRG )は設立された。カジノ産業の主要業界団体であるアメリカ・ゲーミング協会(American Gaming Association)が旗振り役であった。

当時のアメリカ・ゲーミング協会(AGA)代表フランク・ファーレンコ(Frank Fahrenkopf)は1980年代に全国共和党委員会委員長として米大統領選挙で重大な役割を果たすなど、政治的に鋭い嗅覚をもった弁護士であった。

ギャンブル合法化の波が全米に広がっていくと同時に問題ギャンブラーが増えつつあること、そして、ギャンブル依存に陥り財産や家族などすべてを失った人の悲惨な実例がメディアで取り上げられはじめたことに、ゲーム産業の健全育成に危機感をファーレンコは感じた(注14)。
これまで、さらなる税収を期待してギャンブル合法化に積極的であった州政府や議会関係者が態度を一変して極度な規制強化に転ずることを危惧した。

ファーレンコがAGA代表に就任した一年前の1994年に、たばこ産業団体の代表者が連邦議会の委員会公聴会において「ニコチンには中毒性がない」と発言したことによって、世論から信頼を失ったエピソードを広報戦略の教訓とした。

ギャンブル依存問題が存在することを認めるだけでは不十分であり、依存の原因や初期症状、社会的影響にまで踏み込んだ研究において業界自らがリーダーシップを発揮することなくして産業への信頼をこれまでどおり得ることができなくなると判断した。
このコミュニケーション戦略を実践する機関としてNCRGが設立された。

NCRGのホームページにおいては、設立当時はギャンブルに関する調査研究が少ないうえに、同僚評価制度に乏しく科学的な質を維持できる環境ではなかった。
調査研究の質向上を目的としてNCRGが設立されたと簡潔に紹介されている(注15)。

(2)活動目的
極度なギャンブル依存と、若者とギャンブル依存の関係における科学的調査研究の質向上を推進することによって、ギャンブル依存問題(原文では『ギャンブリング障害』Gambling Disorders)に陥っている個人と家族を救うことがNCPGの使命であるとされている。

具体的な目的を三つに分類して紹介する。
① 調査研究の科学的な信頼性を高めるために同僚評価ができる研究体制を整える。
② 最新の研究成果を問題ギャンブリングの予防と診断、介入、治療に取り入れられるようする。
③ 問題ギャンブリングと責任ギャンブリングについての社会的認識を高める。

(3)組織構成
NCRGの事務局はボストン市とワシントン州シアトル市、そしてワシントンDCに分散されている。主要スタッフも三つの事務局に分散して勤務している。
ワシントンDC事務局はギャンブル産業業界団体のAGAと同じ住所になっており、AGAに付随する外郭団体的な存在であることをNCRG自身も認めている。

会員制度はなく、地域支部も存在しないが、特徴的な3機関が内部に設置されている。第一は、申請内容を吟味してどの研究プロジェクトに助成金を出すかを決める科学アドバイザー部会(Scientific Advisory Board)がある。
カジノ産業にとって都合のよい研究に偏るのではないかという疑念を持たれないようするための重要な役割を担っている。

第二の「同僚評価パネル(Peer-Review Panels)」はNCRGがかかわる研究内容を研究者による同僚評価方式によって科学的精度を維持することが期待されている。

三つ目の機関として、3年ほどつづく研究事業への助成金活動を「卓越したNCRGセンター(NCRG Center of Excellence)と命名し、ミネソタ大学とイェール大学、シカゴ大学において研究プロジェクトが展開されている。

運営は、幹部理事4名と理事9名の13名によって担われている。カジノ企業重役や問題ギャンブラー支援団体役員、医療施設役員、元規制担当者、そして専従スタッフが理事の主な経歴である。
会長職にあるAlan M.Feldman氏は大手カジノ運営会社(MGM Resort International)の広報担当副社長である。大学で舞台芸術を学び、広報担当者としてカジノ業界入りしてからは社内外で問題ギャンブル対策と責任ギャンブルの実践普及に携わってきた経歴を持つ。

カジノ産業業界では責任ギャンブリング戦略の第一人者として高い評価を受けている。ユニークな理事として元ラスベガス市長の経歴を持つJennifer Shatley氏が大手カジノ運営会社(Caesars Entertainment Corporation)のコンプライアンス担当副社長の立場で参画している。
ギャンブルゲーム供給サイドからの人材が主流を占める役員構成であるといえる。

科学アドバイザー部会の構成は、ミネソタ大学の精神科医Ken C.Winters先生を委員長として、心理学教授や疫学教授である理事7名で構成されている。

(注14)Strickland,Eliza,(2008) “Gambling with Science:Detemined to defeat Lawsuits over addiction,the casino industry is funding research at a Harvard-affiliated lab”
Salon,June16,2008(http://www.salon.com/2008/06/16)
(注15)http://www.ncrg.org/About NCRG

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